慶應義塾大学 法学部 FIT入試 A方式 2017年 論述問題 解答例

■設問

模擬講義の概要
講義のテーマ:国際的な子どもの奪い合いとハーグ条約
講義の概要:
ハーグ条約とは何か:条約作成の背景
日本のハーグ条約の締結と条約実施法の制定
ハーグ条約の仕組み
ハーグ条約のもとでの子どもの返還拒否事由について
*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50分)を行う。
論述形式試験の概要
論述の設問内容:
講義の要点をまとめたうえで、ハーグ条約の返還拒否事由に関するあなた自身の見解を述べなさい。
解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限無し。
試験時間:45分

■答案構成

5STEPで書く

議論の整理→ハーグ条約と返還拒否事由に関する要約

問題発見→ハーグ条約の構造的欠陥

論証→国際問題であるが故の強制力が仇となる

結論→返還拒否事由は必要である

結論の吟味→返還拒否事由に解釈の余地があるという問題

■答案

議論の整理→ハーグ条約と返還拒否事由に関する要約

ハーグ条約は国境を超えた不法な子供の連れ去りに関する多国間条約である。不法な子供の連れ去りとは、例えば、親の一方の同意もなく子供を元の居住国から連れ出すことや、親の一方の同意を得て一時帰国したあと、約束の期日を過ぎても子供を元の居住国に帰らせないなどが挙げられる。このような場合に、迅速かつ確実に子供を元の居住国に帰れるような手続きなどを定めている国際協力の仕組みである。日本人と外国人などのような国際結婚の場合のみならず、日本人同士での結婚でもハーグ条約は適用される。尚、適用の際は、子供が連れ去られた国と連れ込まれた国の両方がハーグ条約に加入している必要がある。ハーグ条約に置いて、基本的に子供の返還に応じないことは違法とされている。ただし、以下6つの返還拒否事由に該当する場合は、返還を拒否することができる。
(1)連れ去り又は留置開始の時から1年以上経過した後に裁判所に申立てがされ,かつ,子が新たな環境に適応している場合。
(2)申立人が連れ去り又は留置開始の時に現実に監護の権利を行使していなかった場合(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く)。
(3)申立人が連れ去り若しくは留置の開始の前にこれに同意し,又は事後に承諾した場合。
(4)常居所地国に返還することによって,子の心身に害悪を及ぼすこと,その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある場合。
(5)子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において,子が常居所地国に返還されることを拒んでいる場合。
(6)常居所地国に子を返還することが人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合。

問題発見→ハーグ条約の構造的欠陥

ハーグ条約には大きな構造的欠陥がある。それは個々の細やかな事情を考慮せず、子供の強制的返還措置をとってしまうことである。具体例をあげる。ある日本人女性が外国人男性と海外で結婚し、子供を産んだとする。しかし、女性と子供は外国人男性にDV(ドメスティックバイオレンス)を日常的に受けていた。このような状況において、女性は我慢しきれず、恐怖にかられて子供とともに避難するのが通常である。もちろん、海外にいては、自分の家族も気の知れた友人もいない。言語もまともに通じず、司法や行政のサポートを受けるのも難しい。そうなると、DVから身を護るために子供を連れて日本に帰国するというのは妥当な選択である。しかし、ハーグ条約がこれを許さない。この場合、日本人女性は夫である外国人男性の許可なく別の国に子供を連れて行ったことになる。これはハーグ条約が適用するのに十分な条件を満たしている。したがって、この場合、女性は子供を夫の元へ返還しなければならない。

論証→子供の利益を守るが故の強制力が仇となる

このようなハーグ条約の強制力の理由は、子供の利益を守るためである。多くの場合、子供の連れ去りは片方の親による自己中心的な決定である。一方的な独断により、子供を連れ去ることは、子供にとって利益とはならない。また、連れ去られた側の親が何もできずに泣き寝入りする状況も容認できるものではない。このようなケースを想定すると、子供の利益を守るために強制的に子供を返還することは必要となってしまうのだ。

結論→返還拒否事由は必要である

しかし、例示したように、細やかな事情などを考慮すると必ずしも強制的な子供の返還は正しくないことがわかる。したがって、返還拒否事由のように例外を認め、返還拒否できる余地を残しておくことは大いに重要である。

結論の吟味→返還拒否事由に解釈の余地があるという問題

返還拒否事由はたしかに必要であるが、現状のままの形が正しいかどうかについては疑問が残る。なぜなら返還拒否事由自体が曖昧であり、どのような場合に返還拒否ができるのか議論する余地があるからだ。例えば、返還拒否事由の4番と5番の組み合わせで問題が起こる。子供が10歳以下など、意見考慮の対象になりづらい状況であり、その子供と母親は父親からDVを受けていたとする。しかし、もし、DVの痕跡がたまたま見つからなければ、いくら子供と母親が「DVがあったから国に逃げ帰った」と主張しても、返還拒否事由は適用されない。子供はすぐに父親のもとに帰されることとなるだろう。このような返還拒否事由の漏れを防ぐためにも、例えばDVなどの問題が絡む際は、返還拒否事由を仮適用し、返還するべきかどうかの判断を先延ばしするなどの対処が必要であろう。

ハーグ条約は国境を超えた不法な子供の連れ去りに関する多国間条約である。不法な子供の連れ去りとは、例えば、親の一方の同意もなく子供を元の居住国から連れ出すことや、親の一方の同意を得て一時帰国したあと、約束の期日を過ぎても子供を元の居住国に帰らせないなどが挙げられる。このような場合に、迅速かつ確実に子供を元の居住国に帰れるような手続きなどを定めている国際協力の仕組みである。日本人と外国人などのような国際結婚の場合のみならず、日本人同士での結婚でもハーグ条約は適用される。尚、適用の際は、子供が連れ去られた国と連れ込まれた国の両方がハーグ条約に加入している必要がある。ハーグ条約に置いて、基本的に子供の返還に応じないことは違法とされている。ただし、以下6つの返還拒否事由に該当する場合は、返還を拒否することができる。
(1)連れ去り又は留置開始の時から1年以上経過した後に裁判所に申立てがされ,かつ,子が新たな環境に適応している場合。
(2)申立人が連れ去り又は留置開始の時に現実に監護の権利を行使していなかった場合(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く)。
(3)申立人が連れ去り若しくは留置の開始の前にこれに同意し,又は事後に承諾した場合。
(4)常居所地国に返還することによって,子の心身に害悪を及ぼすこと,その他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険がある場合。
(5)子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において,子が常居所地国に返還されることを拒んでいる場合。
(6)常居所地国に子を返還することが人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められない場合。
ハーグ条約には大きな構造的欠陥がある。それは個々の細やかな事情を考慮せず、子供の強制的返還措置をとってしまうことである。具体例をあげる。ある日本人女性が外国人男性と海外で結婚し、子供を産んだとする。しかし、女性と子供は外国人男性にDV(ドメスティックバイオレンス)を日常的に受けていた。このような状況において、女性は我慢しきれず、恐怖にかられて子供とともに避難するのが通常である。もちろん、海外にいては、自分の家族も気の知れた友人もいない。言語もまともに通じず、司法や行政のサポートを受けるのも難しい。そうなると、DVから身を護るために子供を連れて日本に帰国するというのは妥当な選択である。しかし、ハーグ条約がこれを許さない。この場合、日本人女性は夫である外国人男性の許可なく別の国に子供を連れて行ったことになる。これはハーグ条約が適用するのに十分な条件を満たしている。したがって、この場合、女性は子供を夫の元へ返還しなければならない。
このようなハーグ条約の強制力の理由は、子供の利益を守るためである。多くの場合、子供の連れ去りは片方の親による自己中心的な決定である。一方的な独断により、子供を連れ去ることは、子供にとって利益とはならない。また、連れ去られた側の親が何もできずに泣き寝入りする状況も容認できるものではない。このようなケースを想定すると、子供の利益を守るために強制的に子供を返還することは必要となってしまうのだ。
しかし、例示したように、細やかな事情などを考慮すると必ずしも強制的な子供の返還は正しくないことがわかる。したがって、返還拒否事由のように例外を認め、返還拒否できる余地を残しておくことは大いに重要である。
返還拒否事由はたしかに必要であるが、現状のままの形が正しいかどうかについては疑問が残る。なぜなら返還拒否事由自体が曖昧であり、どのような場合に返還拒否ができるのか議論する余地があるからだ。例えば、返還拒否事由の4番と5番の組み合わせで問題が起こる。子供が10歳以下など、意見考慮の対象になりづらい状況であり、その子供と母親は父親からDVを受けていたとする。しかし、もし、DVの痕跡がたまたま見つからなければ、いくら子供と母親が「DVがあったから国に逃げ帰った」と主張しても、返還拒否事由は適用されない。子供はすぐに父親のもとに帰されることとなるだろう。このような返還拒否事由の漏れを防ぐためにも、例えばDVなどの問題が絡む際は、返還拒否事由を仮適用し、返還するべきかどうかの判断を先延ばしするなどの対処が必要であろう。

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