慶應義塾大学 FIT入試第2次選考 法学部法律学科 2006年論述問題 解答例

2006年度FIT入試第二次試験概要(法律学科)

1.模擬講義の概要 •講義のテーマ:護憲と改憲のはざまで

  • 講義の概要: 1.市民社会と自由

近代憲法の先駆けとしてのマグナカルタ

基本的人権の尊重の起源

2.日本における憲法の近代的展開

日本人の法意識-「法嫌い・裁判嫌い」の国民性

日本人の権利意識と憲法草案

大日本帝国憲法の制定

 大日本帝国憲法の「立憲(君主)主義」

大日本帝国憲法から日本国憲法へ-第二次世界大戦後の日本人と法

*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50分)を行う。(黒板を使用する。)

2.論述形式試験の概要 •論述の設問内容:講義の内容要約とそれに対する自己の見解

  • 解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限無し。
  • 試験時間:45分

 

【議論の整理】

護憲と改憲の問題を検討するにあたり、憲法とは何かについて概観する。憲法とは、「国家の統治機構を定め、国家権力を制限することによって国民の諸権利を認めることを明文化して定めた法典」ということができる。具体的には、国民主権、基本的人権の尊重、権力分立(けんりょくぶんりゅう)の3つの基本原理を踏まえて制定されている憲法を「近代憲法」と呼ぶ。

その近代憲法の先駆けとしては、マグナカルタと呼ばれる明文がイギリスに存在した。マグナカルタでは、国王の徴税権の制限や、人身の自由、法の支配といった原則が明文で確認され、王権を制限するとともに封建貴族の権利が認められた。しかし、マグナカルタで認められている権利とは、基本的人権の尊重として画期的ではあったものの、貴族の権利のみしか保障されず、一般市民に保障される権利は明記されなかった。その点、「基本的人権の尊重」の起源とされるのは、イギリスの権利章典、アメリカの独立宣言、フランス革命による人権宣言であるとされる。これらの宣言によって、一般市民に「国家権力からの自由」(自由権)が保障され、近代憲法が形成されていったと考えられている。

それでは、海外にて発祥した人権思想が日本においてどのような展開をしたのであろうか。日本では、明治時代に大日本帝国憲法が制定され、主権者としての天皇が制定した憲法の下、法律の範囲内で国民に自由が保障される存在になった。また、憲法によって天皇の立場が明確となり、立憲君主制を対外的に明確にしえた点で、大日本帝国憲法は、意義のあるものだった。しかし、あくまで天皇が定めた憲法(欽定憲法)とされ、国民主権の原理に基づいて国民が国民の手で定める民定憲法とはならなかったために、近代憲法とはいいがたい憲法であったのも事実だ。

【問題発見】

さて、以上の議論をもとに、日本人の法意識として、「法嫌い・裁判嫌い」の国民性があると言われることについて考えよう。確かに、欧米人が争いの起きた際にすぐに裁判を行うことは有名である一方で、日本人は裁判という制度をなかなか利用しようとしない。それどころか、法律そのものへの苦手意識が強く、日常生活を生きるうえで法律を全く利用しようしない。法律を利用するのは、日常生活に支障ができたときだけである。これはなぜなのであろうか。

【論証】

思うに、日本人が法律嫌い、裁判嫌いである理由は、大日本憲法制定時に、「君主から臣民に憲法が与えられた」という体裁がとられたこととも関係があると思われる。なぜなら、米・英・仏といった国では、自分達の手で法律を作り、権利を勝ち取ったという意識が強く、法律への苦手意識が少ないことに対して、日本人は一般市民が革命や選挙によって自由を勝ち取った経験が全くないためである。一般市民が立ち上がって権利を獲得し、法律を制定したわけではないため、法律と一般市民との間の距離がきわめて長いと考えることも可能だ。また、戦後の日本国憲法でさえも、GHQが2週間でつくった憲法草案を和訳して作成したものであって、一般市民はこれまた憲法制定にまったく携わることができなかった。その憲法制定のいきさつが、市民が法律になじめないことをさらに助長しているように考えられる。このように、日本人の権利意識や法律についての理解が浅いのは、憲法の制定過程で一般市民が憲法や法律の制定に関わることが全くなかったという歴史的な事情に関係があるように思われる。先の大戦によって、国民主権、基本的人権の尊重、権力分立の3つの基本原理を踏まえた近代憲法を掲げることになった日本においても、近代憲法の下で、憲法の実態に沿った形で、日本人の権利意識や法律に対する意識の改善が期待されるところである。

この点、10年ほど前から裁判員制度という特定の刑事裁判に関して、被告人の量刑の確定を一般市民が裁判員となって裁判官とともに裁判を行う制度が創設された。こういった制度を利用して、法律への理解を深め、実際の法律の運用方法を知っておくことがきわめて大切なのではないかと考える。裁判員制度を通して、憲法や法律への理解を普段から深めることによって、改憲や護憲の議論が中身のあるものになることが期待される。

【結論】

日本人が改憲や護憲の議論をするには、決定的に不足している権利や法律についての意識の不足を具体的に3つの方法によって補うことが必要であると考えられる。第一に、国民主権、基本的人権の尊重、権力分立という3つの原理を基礎にした近代憲法がなぜ成立したのかという歴史を知ること。第二に、日本国憲法が成立されるまでの憲法制定過程を知ること。第三に、裁判員制度等により現在の法律がどのように運用されているかを知ること。これらの方策によって、決定的に不足している憲法と法律の知識と経験を深めて、改憲・護憲について中身のある議論を行うことが大切になると考えられる。

【結論の吟味】→不要

 

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