慶應義塾大学 FIT入試第2次選考 法学部法律学科 2009年論述問題 解答例

2009年度FIT入試第2次選考概要(法律学科)

1.模擬講義の概要 •講義のテーマ:表現の自由の意義および限界

  • 講義の概要: 1.表現の自由の意義と保障対象

2.表現の自由の限界

3.青少年保護と表現の自由

*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50分)を行う。

2.論述形式試験の概要 •論述の設問内容:有害サイトへのアクセスを制限することが、憲法が保障する表現の自由とどのような関係にあるかを、講義内容をふまえて論述

  • 解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限無し。
  • 試験時間:45分

 

【議論の整理】

まず、「表現の自由」について概観したい。「表現の自由」とは、日本国憲法第21条第1項で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と定められているように、思想・信条・主張などを対外的に表明することを認める権利である。この権利を認めることによって、政府の検閲からの自由なども保障される。また、民主主義社会の根本にある「議論」を通じて意見交換をするために必要不可欠な権利であるという認識をされるため、他の権利よりも優越的な地位があると理解されている。というのは、たとえ他の経済的自由が不当に制約されることがあっても、表現の自由を中心とする精神的自由が有効に機能していれば、議論をすることを通して、不当な自由の制約を改廃することが可能になると考えられているためである。そのため、精神的自由を規制する立法の合憲性については、経済的自由の規制立法よりも特に厳しい基準に基づいて審査されなければならないとする考え方(「二重の基準」論)が判例によって確立されている。その「特に厳しい基準」とは、例えば、ある表現行為が実質的害悪を引き起こす可能性が明白であり、かつ、その害悪が重大で、害悪の発生が時間的に切迫している場合で、規制手段が害悪を避けるために必要不可欠であることの要件が満たされた場合にのみ、表現行為を規制することができるとする「明白かつ現在の危険」の基準といったものである。こういった基準以外にも、「精神的自由を規制する立法は明確なものでなければならない」とする明確性の基準も存在する。さらに、立法の規制手段が広汎であって問題がある法令については、立法目的を達成するため、より規制の程度が少ない手段が存在しないかどうかを具体的・実質的に審査して、そういった手段がある場合には規制立法を違憲と考える「より制限的でない他の選びうる手段」の基準などがある。

また、「二重の基準」論をもとにして、表現の自由の規制立法を①検閲・事前抑制、②漠然不明確または過度に広汎な規制、③表現内容規制、④表現内容中立規制の4つに分類し、その分類に応じて規制の基準を決定するという方法がとられることも裁判所の判例ではありえる。

それ以外にも、「表現の自由」には、憲法第13条の「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とする「公共の福祉」による限界があると理解されることもある。また、刑法175条では、わいせつな文書図画を頒布し、公然と陳列する表現行為が犯罪とされている。この規定は、表現の自由の制限の一つとして、社会環境としての性風俗を清潔に保ち、抵抗力の弱い青少年を保護することを目的としていると理解されている。

以上の前提を基にして、「有害サイトへのアクセスを制限することが、憲法が保障する表現の自由とどのような関係にあるか」について考えたい。

【問題発見】・【論証】→どのような関係にあるのかの論証のため、問題発見と並列して論証した

まず、有害サイトへのアクセスを制限することが、「民主主義制度を成立させるために重要な精神的自由を規制する立法であるか否か」を検討する。この点は、有害サイトへのアクセスが制限されても、その制限が不当なものであれば、アクセスの制限が不当な自由の制限である旨の議論を行って、自由を制限する立法を裁判所に訴えればよく、議論ができなくなるような重要な精神的自由には当たらないと理解してよいと思われる。そのため、有害サイトへのアクセスを制限する立法は、特に厳しい基準が必要な「精神的自由を規制する立法」には当たらない。

それでは、有害サイトへのアクセスが可能であること自体が、刑法175条で規制するわいせつな文書図画の頒布にあたるのではないかという点についてはどうであろうか。この点は、有害サイトへのアクセスそのものが「わいせつな文書図画の公然と陳列する行為」に当たるかどうか判断することになるが、有害サイトにアクセスすれば、誰でも見ることが閲覧することができるという外形を考えれば、「わいせつな文書図画の公然と陳列する行為」に当たると理解することも可能である。

ただし、健全な性風俗を保つ目的で有害サイトへのアクセスを制限することによって、表現の自由が過度に制限されること自体は、極力避けるべきであると考えられる。そのため、「二重の基準」論を議論の前提として、「表現内容規制」を政治的に見て価値の高い規制であるのか、価値の低い営利的言論や憎悪的表現であるのかを実質的に判断するということも考えられる。この基準を使った場合、有害サイトの「表現内容」が法律的な保護に値する表現であるかどうかが判断のポイントとなる。

【結論】

以上の検討より、「有害サイトへのアクセスを制限することが、憲法が保障する表現の自由とどのような関係にあるか」については、特に厳しい基準が必要な「精神的自由を規制する立法」には当たらないが、刑法175条で規制する「わいせつな文書図画の公然と陳列する行為」に当たる場合があると考えられる。ただし、「表現内容」が実質的にみて政治的価値の高い表現である場合は、法律的な保護に値する表現として、「表現の自由」の保護する範囲に入る場合もありうると理解すべきである。

【結論の吟味】→不要

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