慶應義塾大学 FIT入試第2次選考 法学部法律学科 2008年論述問題 解答例

2008年度FIT入試第二次試験概要(法律学科)

1.模擬講義の概要 •講義のテーマ:財産の帰属に関する決め方のルールとその合理性

  • 講義の概要: 1.序論

2.当事者の人的関係の有無・性質に応じた決定方法

3.物の性質に応じた決定方法

4.おわりに

*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50分)を行う。

2.論述形式試験の概要 •論述の設問内容:今日の講義では、弁護士のあり方についてのひとつの考え方が示されました。あなたの意見を述べなさい。

  • 解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限無し。
  • 試験時間:45分

 

【議論の整理】

「財産の帰属に関する決め方のルールと、その合理性」について概観したい。

財産権の保障については、様々な考え方がある。日本国憲法によれば、第29条1項にて「財産はこれを犯してはならない」という規定が存在し、個人が財産権を保障しうる法制度(私有財産制)が保障されている。同規定はこれ以外にも、個人が現に有する具体的な財産上の権利の保障をも規定している。こういった財産上の権利を不可侵の権利として保障する背景には、個人の財産を保障する制度があることによって、独立した個人としての意見表明や自由な議論が可能になるという歴史的背景が存在する。私有財産制を基にした経済的自由が保障されない下での議論は、自由な議論とはならず、民主主義的制度が実効性を持たないという教訓を考慮することで、日本は資本主義国家として私有財産制を保障していると考えられる。一方、中国をはじめとした社会主義国家や、共産主義国家では、たとえ市場主義原理を導入した経済であっても財産権は最終的には国家に帰属する。特に、有事になった際はその傾向が顕著になる。ただ、資本主義国家であっても、個人の財産は「公共の福祉」によって、「法律で定める」範囲の制限を受けることとなっている。この財産権の制限立法は、日本においては、法律であれ条例であれ、①目的が公共の福祉に合致すること、②手段が必要でかつ合理的であること、③立法府の合理的な裁量範囲を逸脱していないことという基準を満たしていれば、合憲とされるのが現状の判例の立場となっている。

また、財産権の保障については、物の対象や性質によって、物を直接に支配する排他的権利としての物権、当事者の人的関係から生じてくる債権、知的創造活動の成果に対して一定期間に限定して財産権を保障する知的財産権(発明やソフトウェア、ブランドなどの無形資産に関する権利、著作権、特許権など)に分けることが可能である。つまり、財産権は対象の性質に応じて細かい規定によって制度保障がなされている。

具体的には、物権については、取引安全の見地から原則として物を直接支配する排他的権利は法律で定められているもの以外は認められないという「物権法定主義」が民法上採用され、それぞれ所有権、制限物権、占有権(ものを事実上占有することを正当とするための実質的権利)というものが認められている。

一方、債権者が特定の債務者に対して、一定の給付を求める権利を「債権」と呼ぶ。債権は、人的関係により生ずる権利義務関係であるため、発生の原因(契約、不当利得、不法行為など)や債券の目的に応じて債権の種類や帰属の方法が様々に分類されている。

最後に、知的財産権の帰属の定め方は、契約に関係する権利を当事者から相手方に移動させる移動型、権利を当事者に留保し相手方に知的財産権の利用を承諾する留保型、そのどちらにも該当しないタイプの3種類に分けることができる。知的財産権は、米中間で財産権の帰属の方法が一方的に中国側に有利なルールを中国側が譲らなかったため、米中間での貿易戦争の原因となった。そのため、知的財産権の帰属については、現代国際社会においては特に、経済思想が対立しがちの資本主義国と社会主義国の間での貿易上の国際的ルールを構築することが急務となっている。

【問題発見】

上記のような法律上の財産権が日本においては、認められている。それでは、財産権の帰属の問題に対して、法律家はどのように対応をすることがよいのであろうか。家族法における相続問題や、ホームレスの法律上の保護をどうするかといった問題では、ともすれば社会的弱者が法律上保護されないという問題が起きがちになるため、法律家の考え方が問題となる。

【論証】

この点、法律家とは、法律を厳格に解釈し、法に則った形での人権を救済することができれば、十分その仕事を果たしているという考え方がある。確かに、国家というものは、法律に基づいて行政を行うべき義務が課されているため、人権救済のために裁判所に案件を持ち込んでも、結果的に法律の範囲内でしか人権を保護できないという人権救済に限度があるのは事実である。しかし、法に則った形での人権救済というものは、国家や官僚でも可能な考え方であって、国家公務員ではない民間の法律家が主に取り組むべき仕事ではないということも可能だ。むしろ法律家が行うべき仕事は、法に則った形で人権を救済しきれていない行政の不手際(作為上・不作為上の責任)を問題として認識し、未だに問題とされていない人権保護を成し遂げることにこそ、主な仕事が存在すると考えるべきである。なぜなら、未だに問題とされていない人権保護について、実際に初めに相談にくるのは、大抵はコスト面でも手間の面でも、裁判所でも行政窓口ではなく、一般の法律事務所であるのが実際のところであるからだ。従って、未だ発見されていない人権をいかにして保護するための法律論を展開するか、ということが法律家の仕事になると言わざるをえない。具体的には、家族法における相続問題であっても、明確な遺言がないがために、民法上の規定では明らかに財産分与が正当に受けられない場合の対応をどうするかといったことや、路上を不法占拠しているホームレスが行政上の代執行制度によって、住居を強制退去させざるを得ないことについての法律上の保護をどうするかといった問題に対し、法律家は果敢に挑戦し、最善を尽くさなければならないと考える。

【結論】

以上のことから、財産権の帰属については、対象物の性質や対象によって様々な法律が存在するが、その法律の適用においては、法律家が未だに発見されていない人権保護を達成するために、法律論を駆使して果敢に挑戦し、より多くの人権を保護できるように最善を尽くすことが大切であると考えられる。

【結論の吟味】→不要

 

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