慶應義塾大学 FIT入試第2次選考 法学部政治学科 2007年論述問題 解答例

2007年度FIT入試第二次試験概要(政治学科)

1.模擬講義の概要 •講義のテーマ:東アジアの世界と日本

  • 講義の概要: 1.歴史のなかの東アジア

2.第二次大戦後の東アジア

3.東アジア共同体の課題

*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50分)を行う。

*パワーポイントを使用した。

2.論述形式試験の概要 •論述の設問内容:講義の内容要約とそれに対する自己の見解

  • 解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限なし。
  • 試験時間:45分

 

【議論の整理】

東アジアの世界と日本の関係について概観したい。近代になって欧米諸国の資本主義化に伴い、急速に文明が近代化した欧米列強は、帝国資本主義的対外政策によって東アジア諸国を植民地化してきた。東インド会社を筆頭に、香辛料の貿易目的で欧米人が訪れた東アジアも、他の地域と同様に先住民を支配し、搾取する社会が次第に生まれ始めた。具体的には、官僚・軍人・経営者などの少数の欧米人が圧倒的多数である現地人を支配するという植民地社会の形成である。

植民地化制作を逃れた日本とタイ以外の国は、19世紀には、例外なく欧米諸国の植民地化政策に巻き込まれた。ビルマとマレー半島の先端部はイギリス領、カンボジア・ラオスといったインドシナ諸島はフランス領、インドネシアはオランダ領、フィリピンはアメリカ領、清国は各国が先を争うように進出する国家となって、各地域を欧米列強が植民地として支配し、産業革命の結果、必要とされる原材料の供給地となった。

ただ、欧米列強による植民地化政策によって、欧米諸国からの技術や思想が伝播し、都市部を中心とした近代化が各地で進み、教養ある知識人層が各地域にて増えた。その意味では、植民地経営によって東アジアの文明も急速に進展したが、少数の欧米人との間には決定的な社会的格差が存在した。

これに目をつけて、格差解消を掲げ、自国の資源獲得の必要と結びつけて、東アジアに進出し始めたのが第二次大戦前の日本である。日本は、主たる石油の輸入先であるアメリカとの交渉が決裂し、自国へのエネルギー供給がストップされることに及んで、軍事的行動によって東アジアへ進出することが国策となった。そのため、日本は、仏領インドシナ連邦に進駐し、マレー半島のシンガポールで難航不落の英領を陥落させて、自国の支配地域を拡大することで、各国の現地人の独立の支援と資源獲得の双方を目指した。

先の大戦の結果、日本国は敗戦することとなったが、各国の現地人からの評判は、中国と朝鮮半島を除いては、概ねよかった。特に台湾では、統治政策が功を奏し、後藤新平をはじめとした政治家の政策によって、麻薬の撲滅から始まって、警察制度の確立によって治安が維持され、公衆衛生が大幅に改善した。日本の政策の評判が良かった地域では、現地の旧日本軍兵士が現地人と一体となって、独立運動を展開した地域も生まれ、各地域が戦後に欧米諸国から自立していくことに成功した。先の大戦が、日本による一方的な侵略行為の罪を糺す必要があるとされる一方で、東アジア各国の民族自決を助ける結果になったともいわれるのはこのためである。

また、1990年代後半にアジアにて頻発した通貨危機と言われる各国の金融危機以降、東アジア内での多国間での金融協力等の枠組みが中国を中心に積極的に模索された。日本国内では、民主党(当時)の鳩山由紀夫元首相などが、日中韓プラスASEANによる「東アジア共同体」を推進すべく、2009年の衆議院総選挙に出馬し、自民党と政権交代をしたことが印象的な出来事であった。

【問題発見】

さて、現在の地平から、「東アジア共同体」の考え方がどのような問題を抱えているかを考えたい。日本国内で、当時の民主党の鳩山由紀夫氏が掲げていた「東アジア共同体」は、先の大戦の贖罪思想が色濃い対外政策であった。そのため、先の大戦の結果として、東アジア全体を、戦後の贖罪思想を背景にして概観することができるかどうかが問題となる。

【論証】

この点、先の大戦を歴史認識としてどのように考えるかということが非常に重要になる。この点、鳩山由紀夫氏の政治思想には、大きな偏りがあった可能性が否定できない。確かに、先の大戦における日本の東アジア進出によって、各国が戦争に巻き込まれることになったというのは事実である。そのため、ある意味では、「敗戦した」という結果責任が日本にあることは間違いがない。しかし、1990年代に急浮上した従軍慰安婦問題や南京大虐殺のように、これまで全く問題とされてこなかった事案が原因となって、「旧日本軍が大きな罪を犯した」と考えるのは極めて早計な話である。従軍慰安婦問題に関しては、確たる証拠がなく、関係者とされるやや素性の怪しい“元慰安婦”の証言が存在するのみであるし、南京大虐殺(南京市民を30万人殺した)といわれる事件は、当時20万人程度しか南京市民がおらず、かつ、当時市街戦が南京市内では全く起きず、南京市周辺の土壌からも数十万人の遺骨が未だ発掘されない時点で、きわめて証拠の乏しい主張と言わざるをえないのが現状である。

そういった1990年代からの歴史認識問題を容認する形での「東アジア共同体」構想を実現するのは、日本の国益にかなった外交とはならないのは明らかである。ただでさえ、朝鮮半島における北朝鮮問題、韓国とのレーザー照射問題・竹島問題、中国との尖閣領土問題という外交問題が起きている状態で、日本の外交政策上、論拠のきわめて乏しい歴史認識問題を容認し、「東アジア共同体」構想に賛同することは極めて難しいものと考える。

【結論】

以上のことより、日中韓プラスASEAN諸国による「東アジア共同体」構想は、中韓の証拠性がきわめて乏しい歴史認識問題が存在し続ける限りは、実現性が乏しい構想であったと考えられる。

【結論の吟味】

現在、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)が、米国抜きの11か国の参加によって2018年の年末に発行された。TPP加盟国では、農畜産物の関税が撤廃もしくは引き下げされることとなる。TPPは、外交問題が山積みとなっている中国・韓国を抜いた形での多国間の貿易枠組みである。そのため、「東アジア共同体」構想とは別で、かつ、安全保障上の問題に配慮された形で、多国間の貿易枠組みが構想されていると言える。TPP発行という視点からも、「東アジア共同体」構想は、現在は採用されていない構想であるということが可能である。

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