上智大学 法学部 国際関係法学科 レポート等特定課題 2019年 小論文 解答例

■設問

第二次大戦後においては「西側」諸国で、そして冷戦後においては地球規模の世界において、自由貿易と民主主義は国際社会の安定化のための基盤であるという理念が広く共有されてきた。しかし、近年、欧米諸国の一部では、この理念に反するかのような動きが目立つようになってきている。この理由は何だと思いますか。また、そのような動きは今後世界の安定をどの程度脅かすようになると思いますか。適例を2,3挙げながら貴方の考えを述べなさい。

 

■答案構成

議論の整理→自由貿易と民主主義の変容とその影響

問題発見→不要

論証→不要

解決策or結論→不要

解決策or結論の吟味→不要

 

■答案

議論の整理→自由貿易と民主主義の変容とその影響

自由貿易と民主主義は終戦後世界的規模で拡大した理念であり、その遵守は国際社会の安定の基盤になるとして信じられてきた。関税など国家の貿易統制を抑え貿易取引を自由にすることで経済全体の利益率の上昇を目指した自由貿易は国際社会の規範となり、国家の構成員たる国民が国家の支配者となる民主主義は平和を希求する風潮のもとで国際社会の基準となっていったのだ。しかし近年の欧米諸国ではその理念に反するかのような動きが見え始めている。これは一体どういうことなのだろうか。本論では自由貿易と民主主義それぞれの事例を交えながら今後への影響について言及していきたい。まず自由貿易で現在注目されている問題が2018年以降に国際問題として表面化している米中貿易戦争である。これは本来より世界の覇権を握ってきたアメリカ合衆国と近代に入り急激な経済成長を見せる中華人民共和国が起こしている、貿易を通じた経済競争の様相である。事の発端は現在大統領職に就くドナルド・トランプ氏が自身の選挙中に米中貿易における損得の不均衡を提唱したことに始まる。彼の大統領就任を機に加速度的に米中貿易の摩擦は激化する。アメリカが追加関税を決定すると中国側も報復関税措置を行ういわゆる貿易戦争が始まったのだ。また同様の自由貿易に関する反対の動きとして欧州連合からのイギリスの離脱も挙げられる。移民問題が重篤化し雇用情勢の悪化に悩まされていたイギリスは2016年欧州連合からの離脱か残留かの是非を問うため国民投票を行った。残留派であった当時の首相デーヴィッド・キャメロン氏を含め残留派が上回ると予想された世論に対して結果は僅差で離脱派が上回っていた。これによりイギリス政党の様相は激変し欧州連合離脱に向けての動きが加速することとなる。しかしそもそもなぜ自由貿易が約束されるはずの残留派を離脱派が上回ったのだろうか。離脱への動きはすなわち自由貿易を脱する保護貿易への転換と考えられる。欧州連合は人や物、資本やサービスといった四つの移動の自由を掲げている。それにより起こったのが先述した移民問題であった。となると国家が介入することを許す保護貿易への転換は自国産業や自国そのものを守ることに繋がる。すなわち先進国であるが故に新興国や貧困にある国の負債を負うことになる経済格差がこの離脱の根幹にはあったと考えられる。このように自由貿易の問題は先進国にこそ見出される問題であるともいえる。欧州連合のように国家間の規制を調整し均一的に働きかける構造は、国家間に存在する経済格差を無視した構造といっても過言ではない。イギリスのように革新的な飛躍を遂げた先進国は同じ欧州連合に属するギリシャやスペインなどの経済的に裕福とは言い難い国の経済的格差を埋めていかなくてはならない。これこそ対等を唱える自由貿易の盲点となるデメリットである。対して冒頭で述べた米中貿易戦争はまた異なった構造をとっている。一見グローバル化を盾に各国で覇権を握ってきたアメリカと圧倒的な国土と数の利で追いかけてきた中国の利益追求による貿易問題に見えるが、内実はアメリカの生産力の低下にあった。トランプ氏は自由貿易により他国に流出していった製造業の減少を懸念し自国に生産力を取り戻すため、不均衡貿易が見受けられた中国を手始めに関税を導入していったと考えられる。つまり根本は自由貿易により減衰した自国の産業を再度活性化させるために保護主義へと転換を見せ始めているのである。ここに付随して民主主義の変容も取り上げてみたい。米中貿易戦争の最中にある中国は社会主義国家として名高い。社会主義とはアメリカなどの資本主義に見える個人主義的な自由経済を排除し、国民全員の幸福を目指してより公正で平等な社会の実現を目指す経済政策のことを指す。この社会主義を掲げてきた中国は現在、ある一点において権威主義的様相を孕んできている。中国では一党独裁の現状が長期化しており、社会主義のもとにおいてそれは権威に服従する権威主義にすり替わってきている。けれどもその長期的な独裁政権の中で中国の国内総生産は日本を抜いて世界で第二位の経済大国となるまでに成長した。更には自由貿易に固執することもなくアメリカへは報復関税措置をとるなど、一党独裁の権威主義だからこそ行える国家単位での選択を次々と披露している。これはもはや権威主義的民主主義とも言い換えられよう。ここまで事例を踏まえて自由貿易と民主主義の変容をみてきたが、この変容は今後の国際社会の安定に対しどのような影響力を持ち得るだろうか。私は自由貿易から保護貿易への転換は国家の経済状況を鑑みながら世界的規模で起こることで国家社会としての経済成長を遂げられると考える。なぜなら今日における国家間の経済格差は各国の経済状況に応じて行われるべきであり、一時的な断絶と長期的な負債の超過であれば前者をとるべきだと考えるためだ。しかし軌道を逸らしつつある民主主義においては世界的な均衡が必要である。保護貿易への転換を為すならば民主主義の崩壊はその断絶をかえって長期化させることに他ならないからだ。

 

(計2095字)

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