上智大学 文学部 新聞学科 レポート等特定課題 2019年 小論文 解答例

■設問

最近の時事問題の中から関心をもったテーマを一つ選び、よく調べた上で、それに関する報道の在り方も含め、当該テーマについてのあなたの意見を述べなさい。

※対象とした新聞記事、放送番組などについては、新聞紙名、局名・番組名、年月日等、参照した文献については、著者名、書名・論文名、出版社名、刊行年月等、その出典を明示すること。

 

■答案構成

議論の整理→園児虐待事件の概要と報道内容

問題発見→報道の在り方の違い

論証→三角関係にある3つの報道形態

解決策or結論→報道の役割

解決策or結論の吟味→不要

 

■答案

議論の整理→「あかつき保育園」への改善勧告までの全容

今回私が取り上げたいのは福岡市の認可保育園で起きた園児虐待の事件である。事件は外部からの情報提供を受けた福岡市が特別指導監査を行ったことで発覚に至った。当該の「あかつき保育園」は福岡市東区の社会福祉法人「北斗会」が運営する認可保育園であり、園児への暴言や不適切行為は少なくとも平成28年度から行われていたとされる。今回事件の発覚に至り福岡市は保育園を運営する社会福祉法人に改善勧告を行った。問題となった暴言には「バカ」「ブタ」など園児でも理解ができてしまうような言葉が多用され、不適切行為に至っては口にテープを貼ったり用を足したいという懇願を無視しそのまま漏らさせるなど極めて悪質な行為ばかりが見受けられた。また鬼の部屋と呼ばれるお仕置き部屋が用意され、一定時間園児を閉じ込めるなど常軌を逸した行為なども確認されている。

問題発見→報道の在り方の違い

この事件において論点となってくるのはやはりなぜそのような事件が起きてしまったのかという所にあるだろう。何が起こっていたのかという点においてはTBSの「ひるおび」にて詳しく議論が展開されていた。番組ではまず園児の入園先となる認可保育園と幼稚園の違いから論じられ、フリップを用いながら必要な情報を整理させていく手法が取られた。また入手した音声による不適切行為の裏付けも同時に為されていた。これはスキャンダラスな方向に向かう報道においてしばしば蔑ろにされがちな事実確認の徹底検証を示しており、議論を進める前段階として非常に効果的だ。一方この点に関して朝日新聞では福岡市が虐待などと認定した事例を事細かに列挙していており、同じ保育園に通っていた児童の母親の証言なども掲載している。しかしなぜ起きてしまったのかという問いに対して議題を通して幾つかの結論を出していたのはテレビ番組の方であった。では新聞による報道の利点とは何か。朝日新聞では事件の概要から始まり現状下されている結論がまず提示されていた。そこから事件発覚までの子細な状況説明が行われ、実際に確認された虐待例がまとめられていたためデータとしての確定的な事実が非常に明確に示されている。つまりテレビ番組で登場していた個人的な思想や専門的な見解などは殆ど見られない。これもまた報道の一つの在り方であろう。私が更に興味深く感じたのはNHKのNHKニュース7で行われた報道である。NHKニュース7ではコメンテーターや専門家などは一切登場せずアナウンサーの口から淡々と事件の概要と現状が説明されていた。つまり手法としては新聞報道に近い構成をとっていたのである。しかしその説明の際には当該の「あかつき保育園」の映像が流され、事件のイメージを手伝ってくれていた。

論証→三角関係にある3つの報道形態

ここまでの報道形態を整理すると大きく3つに分類できると私は考える。つまりテレビ番組における「自由討論型」と新聞での「事実論証型」、そしてNHKがとる「イメージ投影型」である。自由討論型はテレビ番組でよく使用されている報道の在り方で、世間の声としてのコメンテーターやその筋に詳しい専門家などがしばしば招かれて、それぞれの意見を交えて事件の概要について議論がなされる。最終的には程度の差はあれども幾つかの主張や意見が提示され一人では持ち得なかった見解を得ることができよう。けれどもこの手法はしばしばワイドショーのような形へと変容し、あくまで一個人の意見が大きな影響力となる危険性があるようにも感じられる。実際今回の事件においては保育園の現場体制への批判ばかりが目立っており、そもそもなぜ保育士がそのような教育を行うに至ったのかという問題への言及は殆ど為されてはいなかった。報道という中立の立場を鑑みれば保育士や保育園側の主張や現状ももっと取り上げて然るべきである。その点事実論証型を取る新聞での報道は、個人的な主張や意見が入っていない為事実として事件を俯瞰することが容易い。今回で言えば詳細な事例も列挙され、福岡市の改善勧告に至るまでの経緯も頷ける。しかしやはりこの報道の在り方におけるデメリットも存在しており、それは音声や映像が一切ないという事実だ。事件の本筋は確認できてもそこにおける肉付けは個人の想像によって行われるため、同様になぜ起こってしまったのかという事件の本質を読み解くことが難解となっている。そこで最後のNHKで取られるイメージ投影型は、この事実論証型のデメリットを映像の追加によって解消していると言える。しかしこちらもまた自由討論型におけるメリットが消滅しており、事件に対する世間の声や専門的見解がなく一つの事件を多角的に捉えることは難しい。

解決策or結論→報道の役割

報道とは事件を伝えることにあるのは言うまでもないが、その他にも事件から見える社会的な問題の発見や一つの視点に嵌まらない多角的な視野の提供も報道の意義であると私は考える。今回の園児虐待の事件で言えば保育士の雇用における問題点についてもっと議論が為されるべきであり被害者と加害者双方の事情を汲んで報道が行われるべきである。園児虐待という悲劇的な事件の再発防止の為にも、保護者側の取るべき姿勢と保育園と保育士への行うべき指導が均衡をもって議論され初めて事件を報道したと言えよう。

 

(計2110字)

 

《参考資料》

朝日新聞「園児が吐き出した食べ物また口へ…不適切保育に改善勧告」2019年2月15日.

TBS・ひるおび 2019年2月20日.

NHK・NHKニュース7 2019年2月15日.

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