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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学 文学部 小論文 2013年 解説

・ 問題文

設問1「アノミー」「自己本位主義的志向」「自己領域化」という言葉を使用して、携帯電話が社会に及ぼす影響について、筆者の考えをまとめたさい。三○○字以上三六○字以内で説明すること。

設問2傍線部「対幻想は衰弱する」という筆者の主張に対して、賛成か反対か、あなた自身の意見を明確にし、その理由を具体的に述べなさい。三ニ○字以上四○○字以内で論じること。

□ 問題の読み方

設問I

 「アノミー」「自己本位主義的志向」「自己領域化」という言葉は、それぞれとても分かりにくい。それぞれの言葉がどういう意味なのかをしっかりふまえた上で解答を作成する必要がある。

 まとめるべき筆者の考えは「携帯電話が社会に及ぼす影響」について。

 要約として必要な要素は、
1. 世間一般の議論と筆者の考えの共通の前提
2. 世間一般の議論と筆者の考えの対立点
3. 世間一般の議論と筆者の考えの数量的な比較
4. 筆者の考えが一般的な考えのなにを否定しているか?
5. 分かりにくい概念の言い換え
6. 具体例の削除
の6つである。

設問II

「対幻想は衰弱する」という文意は、一目では掴めない。そもそも、「対幻想は衰弱する」という抽象的な概念は、具体化するとどういう意味なのかというのをしっかりと把握した上で解答を書く必要がある。

 また、賛成か反対かについて書かせる問題だが、多くの場合に置いて筆者の主張というのは論理的に完成されている。であるからにして、賛成の立場で意見を書くと、お追従のようになってしまい、筆者の主張をそのままなぞるだけになってしまう。論理的思考に基づく独自の推論を展開できず、結果として大幅な減点をされる可能性も高くなる。

 よって、賛成・反対のどちらかを選択して書くべき設問については必ず反対で答えるのが定石である。この設問で反対意見を書く場合に必要な要素としては、
1. 議論の前提・背景知識の確認
2. 筆者の主張における問題点の設定
3. 原因の分析
4. 新たな解決策の提案
5. 解決策の吟味
の5つである。

□ 課題文の読み方(できるだけ。一段落一行要約)

=筆者が持つ前提=
・ 「家族」ではなく「家族論」の時代について
・ 「家族」の時代という言葉から、私はあまり良いイメージが浮かばない。なぜなら、それらは権力やイデオロギーの匂いがするからだ。
・ スーパーからコンビニへの変化を見ても分かるように、家族を単位とする時代は終わり、個人を単位とする時代が到来している。
・ しかし、家族の時代の状景を払拭して、個人の尊重を第一義に多様性のある生きるに値する家族の時代を拓きつつあるかかといば、簡単にうべなうことはできない。
・ 個人化の時代はこのように自己本位主義的志向を強く促す。
・ それにより、家族の内側が蚕食される、ばらばらになる。
・ このような状況を「アノミー」という。

=デュルケームの議論=
・ アノミーは自己本位主義の芽生えなくしては起こりえない。
・ アノミーとは、個人に優越していた社会が機能しなくなり、それまで規制されていた個人の自己本位主義がどっと表面に露出した結果の社会秩序の崩壊状態のこと。
・ 共通の価値・共通の信念によって統合されている社会と、個人の自己本位主義的志向とは相容れない。
・ 社会化とは、他者が生存する上で必要な欲求が満たされていることが、自分が生存する上でもまた大切であるというふうに誰もが認識し、内部に構造化されていること。
・ 自己本位主義的志向へと人々の重心が傾くようになると、他者に配慮しつつ自己の行動を調整するといったそれまで内部に組み込まれていた価値、信念の働きは弱まる。

=筆者の議論=
・ 自己本位主義的志向が進めば進むほど、社会は「社会なき社会」というアノミー状態を呈する。
・ 自己本位主義的志向という視点だけでは、十分は把握しきれない現実が出現してきた。
・ 携帯電話の出現の象徴性を記述するためには、自己本位主義的志向だけでなく、「個人化」という概念を必要としている。
・ 理由の一つ目は、共用を拒む機器だからである。
・ 理由の二つ目は、機器と個々の存在の同一性が不可分な関係に入ったからである。
・ これらが個人化という用語を要請してくる現実である。
・ 携帯電話という徹底した自己本位主義的メディア機器の登場で、公共の場所はあっという間にアノミー空間と化した。
・ 携帯電話では公的空間でプライベートな内容が交わされることも多い。
・ このことには、自己領域化という用語を作って対応することにした。
・ 携帯電話が使用状態に入った途端、社会空間が個人化し、自己領域化するのだ。
・ 携帯電話の進歩で騒々しいアノミーは一掃されたが、静かなアノミーといっていいような現象が出現した。
・ 自己領域化の深まりが、自分の周りの他社のニードへの静かな無関心という形で広がっている。
・ 空席に我先にと飛び込む人が多くなったように感じられる。
・ 携帯電話を見ていると、老人や障害者などに席を譲ろうとしなくなる。
・ 家族の内側でも似たような光景が現出している。
・ 食卓でも携帯を手放さない人が増えた。
・ 分割は対幻想の買いたいへと進み、その結果家族のアノミーかの過程をたどるのだ、と想像せざるを得なくなる。
・ 食卓につくということは、対幻想を更新し、存続しようという意志の表明
・ 携帯電話の着信があると、その瞬間自己本位主義的志向が自動的に作動し、次の行動において自己領域が露出する。
・ これは電車の中と同じ光景である。
・ かくして対幻想は衰弱する。

□ 解答の指針

設問I

「アノミー」……無秩序であること
「自己本位主義的志向」……自己を最優先にする姿勢
「自己領域化」……公共空間の一部を自分だけの空間としてとらえること

まとめるべき筆者の考えは「携帯電話が社会に及ぼす影響」について。
要約として必要な要素は、
1. 世間一般の議論と筆者の考えの共通の前提
……一般に携帯電話は、個々人の自己本位主義的志向を加速させたといわれている。
2. 世間一般の議論と筆者の考えの対立点
……筆者はそれに加え、携帯電話は、利用者に公共空間を自己領域化させる働きがあるとしている。その理由には、携帯電話が共用を拒絶する機器であること、個々の存在と不可分な機器であることが挙げられる。こうして、公共空間が多数の携帯電話によりどんどん自己領域化されることによって、一種のアノミーといえる光景を呈することになる。
3. 世間一般の議論と筆者の考えの数量的な比較
→これは述べられていない
4. 筆者の考えが一般的な考えのなにを否定しているか?
……携帯電話が社会に及ぼす影響が、個々人の自己本位主義的志向を加速させることだけだという考え。
5. 分かりにくい概念の言い換え
→これは今回語句が指定されており、その意味は十分了解されているので必要ない。
6. 具体例の削除
の6つである。

設問II

 「対幻想は衰弱する」という文意は、一目では掴めない。そもそも、「対幻想は衰弱する」という抽象的な概念は、具体化するとどういう意味なのかというのをしっかりと把握した上で解答を書く必要がある。この場合の対幻想とは家族のことを指していると類推できるが、辞書などを引くと対幻想とは主に家族のことを指していることがわかる。父と子、母と子など1vs1の関係のことを対幻想という。また友人間などでも1vs1の関係の場合には、対幻想という言葉を使う。

 また、賛成か反対かについて書かせる問題だが、多くの場合に置いて筆者の主張というのは論理的に完成されている。であるからにして、賛成の立場で意見を書くと、お追従のようになってしまい、筆者の主張をそのままなぞるだけになってしまう。論理的思考に基づく独自の推論を展開できず、結果として大幅な減点をされる可能性も高くなる。

 よって、賛成・反対のどちらかを選択して書くべき設問については必ず反対で答えるのが定石である。この設問で反対意見を書く場合に必要な要素としては、

答えるべき問い「対幻想は衰弱するのか?」

1. 議論の前提・背景知識の確認
……作者は、家族の食卓が携帯電話の利用により崩壊することを例に挙げて、「対幻想は衰弱する」と述べている。
2. 筆者の主張における問題点の設定
……しかし、対幻想はかならずしも家族間のみの関係ではない。友人間であれ、一対一で人間が向き合う場所にはすべて対幻想は存在する。
3. 原因の分析
……家族の食卓が携帯電話の利用により崩壊することは、友人間の対幻想が、家族間にそれに勝っていることのみを示す。携帯電話の利用者が家族間の対幻想よりも友人間の対幻想を優先するのは、ひとえに友人間の対幻想を優先しているからに過ぎない。
4. 新たな解決策の提案
……家族の食卓が崩壊されることなく、家族の対幻想を衰弱から守りたいのであれば、友人間の対幻想よりも魅力的な家族の対幻想を打ち出すほかない。
5. 解決策の吟味
……携帯電話の普及により、自己領域化が進み、対幻想が衰弱したのではなく、魅力がない対幻想は衰弱し、魅力がある対幻想が場所や時間を選ばずに勃興しただけである。家族という対幻想の衰弱は携帯電話の普及とは関係なく、好むと好まざるとに関わらずなんらかのきっかけで起きただろうと考えられる。
の5つである。

□ 模範解答

設問I

一般に携帯電話は、個々人の自己本位主義的志向を加速させたといわれている。
筆者はそれに加え、携帯電話は、利用者に公共空間を自己領域化させる働きがあるとしている。その理由には、携帯電話が共用を拒絶する機器であること、個々の存在と不可分な機器であることが挙げられる。こうして、公共空間が多数の携帯電話によりどんどん自己領域化されることによって、一種のアノミーといえる光景を呈することになる。
(ここまでで200字程度。量が足りないので具体例で以下穴埋めする。)
その結果として、人々は電車の中でも自己領域の中で携帯電話の操作に熱中し、老人や障害者などが目の前で立っていても席をゆずらなくなるなどの行動に出るようになった。このように携帯電話は公共空間のアノミー化を促進したと筆者は考えている。
(309文字)

設問II

作者は、家族の食卓が携帯電話の利用により崩壊することを例に挙げて、「対幻想は衰弱する」と述べている。しかし、対幻想はかならずしも家族間のみの関係ではない。友人間であれ、一対一で人間が向き合う場所にはすべて対幻想は存在する。
家族の食卓が携帯電話の利用により崩壊することは、友人間の対幻想が、家族間にそれに勝っていることのみを示す。
家族の食卓が崩壊されることなく、家族の対幻想を衰弱から守りたいのであれば、友人間の対幻想よりも魅力的な家族の対幻想を打ち出すほかない。
携帯電話の普及により、自己領域化が進み、対幻想が衰弱したのではなく、魅力がない対幻想は衰弱し、魅力がある対幻想が場所や時間を選ばずに勃興しただけである。家族という対幻想の衰弱は携帯電話の普及とは関係なく、好むと好まざるとに関わらずなんらかのきっかけで起きただろうと考えられる。
(369文字)

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