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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学 文学部 小論文 2009年 解説

・ 問題文

設問1「肉声による対話というダイアローグの時間」(傍線部)が他者への伝達において果たす役割について、一八O字以上二○○字以内で説明したさい。

設問2 著者の主張をふまえ、「間く力」と「アンサンブル」との関係について、四八○字以上五二○字以内で論じなさい。

□ 問題の読み方
設問I
「肉声による対話というダイアローグの時間」というよくわからない言葉がどういう意味なのかをしっかり把握すべきである。ダイアローグというのは、モノローグとは違い二人で話す事である。つまり対話と同義とみていい。
これが、他者への伝達において果たす役割について述べよ、という設問であるが、これは純粋に抜粋すべき問題だろう。また、要約問題としては当然のことだが、あらゆる具体例は削除し、なるべく一般化していくのがコツである。また、これそのもの指す言葉を絶対的に抜粋すると意味が分からなくなるので、相対的にこの言葉の意味するところを見て行く必要がある。
たとえば、
・ 肉声ではないコミュニケーション
・ 対話ではないコミュニケーション
・ ダイアログではないコミュニケーション
がそれぞれ他者への伝達に際してどういった役割を持っているかについて考察し、この視点から「肉声による対話というダイアローグの時間」が持つ役割を考察すると分かりやすい。
設問II
「聞く力」と「アンサンブル」の関係について、という話だが、AとBの関係について述べよというときは、それぞれの絶対的な定義を述べるのではなく、それぞれが相対的にどういう位置にあるのかをしっかり把握することが大切である。
相対的な位置を把握するために必要なのは、AからみたときのB、BからみたときのA、という視点である。たとえば、
1. 「聞く力」という考え方から、「アンサンブル」をどう説明するか?
2. 「アンサンブル」という考え方から、「聞く力」をどう説明するか?
という二つの視点が必要不可欠である。

□ 課題文の読み方
・ 演出に必要なものは、「なにを見て、なにを聞くのか」ということである。
・ 「見る」「聞く」というこの二つの人間が持つ当たり前の能力を見つめ直すことこそが、演出の作業でまず必要である。
・ なにを見て、なにを聞くのか。演劇はつくるのも見るのも人間。すべての人間に共通する一つだけの解答などない。
・ 世界の多くのもの、人間の感情の無数動きからなにが聞こえて来るかにしっかり耳を傾けることが大切。
・ 演劇に限らず、一番大事な事は聞く事。話す事よりも聞く事。
・ 忘れられる小さな声を掬い取るつもりで聞く事。
・ 聞こうとしない人には何も聞こえない。
=
・ 人間全体に、聞く力が衰えている。
・ 携帯電話のメールなどは言いたい事を伝えるだけ。
・ 聞く力は、人間の普通の生活にとって重要。
・ 「相手のせりふを良く聞くこと、相手の声をよく聞いて、それで動いた自分自身の気持ちが次のセリフになる」
・ 「物言う術」の前に「物聞く術」が大切。なぜなら、セリフの意思は相手のセリフを聞くことからしか生まれないから。
・ 相手の言葉を聞くこと、感情を読み取ることから対話が始まる。
・ 自分の短いメッセージを送りさえすればそれでいいとする人間のいかに多いことか。
・ 舞台の善し悪しを語るとき「アンサンブル」ということばがよく使われる。
・ 「大勢の人が巨大な意思を動かそうと石にへばりつき、力を一つに合わせた時、そこにきっとリズムが怒り、そこに一つの歌が生まれてくる」
・ 無数の意志が集まれば、絶対的に美しく大きな音楽が生まれる。
・ 一つ一つの人間の声が集まれば、それぞれ多義的な広がりを可能にする無限の力と情熱をもった集合が生まれるはず。
・ それがただの足し算ではなく、複数のかけ算が成立したとき、それぞれの全身から溢れ出る歌の総和は、巨大な石をも動かせる大きな奇跡を起こすことができる。
・ アンサンブルとは、それぞれ違った歴史を背負い、それぞれ違った状況にある人物たちが、その場でぶつかり引き裂かれた瞬間に起こる、外側へ限りなく放射する力の集合

□ 解答の指針
設問I
まず、
・ 肉声ではないコミュニケーション
・ 対話ではないコミュニケーション
・ ダイアログではないコミュニケーション
について、それぞれ課題文の中でどう書かれているかについて触れて行こう。
まず、これらのコミュニケーションについて、「自分の短いメッセージを送りさえすればそれでいいとする人間のいかに多いことか。」というふうに課題文では、批判的に触れている。
その上で、設問中にある「肉声による対話というダイアローグの時間」という部分については、以下のように触れている。「相手の言葉を聞くこと、感情を読み取ることから対話が始まる。」
後者のように、絶対的に「肉声による対話というダイアローグの時間」を定義する言葉だけでは、当たり前のことすぎて、この言葉の定義をはっきりとさせることはできない。
しかし、
・ 肉声ではないコミュニケーション
・ 対話ではないコミュニケーション
・ ダイアログではないコミュニケーション
に対する批判をしっかりと書き加えることで、この言葉の持つ意味がより鮮明になる。
その上で、それが他者との伝達に際して、
・ 肉声ではないコミュニケーション
・ 対話ではないコミュニケーション
・ ダイアログではないコミュニケーション
と違うどのような役割を果たすかについて書くのが良いだろう。場合によっては、肉声ではなく、対話ではなく、ダイアログではないコミュニケーションが他者への伝達に際してどのような役割を果たすかについて述べることも重要であろう。
設問II
まず、「聞く力」と「アンサンブル」について課題文中からそれぞれ説明する。
「聞く力」とは、対話に不可欠な、相手の言葉を聞く力、感情を読み取る力である。なぜ「聞く力」が、対話に不可欠かといえば、対話は相手の言葉を聞くところから始まるからである。
「アンサンブル」とは、それぞれ違った歴史を背負い、それぞれ違った状況にある人物たちが、その場でぶつかり引き裂かれた瞬間に起こる、外側へ限りなく放射する力の集合。これは、「聞く力」を持った人間同士からしか生まれない力である。
つまり、「聞く力」が「アンサンブル」という力の集合を生み出すのだし、「アンサンブル」を要素分解すると「聞く力」である、と言ったような関係が成り立つ。
これらのことを明確にした上で、
1. 「聞く力」という考え方から、「アンサンブル」をどう説明するか?
2. 「アンサンブル」という考え方から、「聞く力」をどう説明するか?
という問いに答える。
難しいように思うが、意外と簡単な問題である。

□ 模範解答
設問I
肉声による対話というダイアローグの時間」が果たす役割は、相手に響く言葉で自分の言葉を伝達することにこそある。相手の言葉を聞き、感情を読み取り、肉声によって対話するからこそ、相手に響く言葉で自分の言葉を伝達することができる。..
一方、相手の言葉を聞かず、感情を読み取ることもせず、ただ自分の伝えたいことだけのコミュニケーションでは、こうした相手に響く言葉で自分の言葉を伝達することはできない。相手に響く言葉で自分の言葉を伝達することこそが、「肉声による対話というダイアローグの時間」が果たす役割である。(195文字)
設問II
「聞く力」とは、対話に不可欠な、相手の言葉を聞く力、感情を読み取る力である。なぜ「聞く力」が、対話に不可欠かといえば、対話は相手の言葉を聞くところから始まるからである。相手の言葉を聞き、感情を読み取り、肉声によって対話するからこそ、相手に響く言葉で自分の言葉を伝達することができる。「聞く力」を持った人間が行う「肉声による対話というダイアローグの時間」が果たす役割は、相手に響く言葉で自分の言葉を伝達することにこそある。
「アンサンブル」とは、それぞれ違った歴史を背負い、それぞれ違った状況にある人物たちが、その場でぶつかり引き裂かれた瞬間に起こる、外側へ限りなく放射する力の集合のことである。これは、「聞く力」を持った人間同士からしか生まれない力である。
つまり、「聞く力」を持った人間が「アンサンブル」という力の集合を生み出すのだし、「アンサンブル」を要素分解すると「聞く力」を持った人間がいる、と言ったような関係が成り立つ。言い換えれば、「聞く力」をもった一つ一つの人間の声が集まれば、それぞれ多義的な広がりを可能にする無限の力と情熱をもった集合が生まれる。これを「アンサンブル」というのだ。(503文字)

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