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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学 文学部 小論文 2006年 解説

・ 問題文

設問1

なぜ筆者は「測定不能」という文字を「衝撃的な文字」(傍線部@)と受け止めたのか、八○字以上一○○字以内で説明しなさい。

設問2

筆者の述べる「失明した社会」(傍線部の)とはどのような社会のことか、三六○字以上四○○字以内で説明しなさい。

□ 問題の読み方
設問1.
「測定不能」であることがなにかしら「衝撃的な文字」として受け入れられる部分があったのだと予測できる。80文字という文字数は、いかにも短く、どのようにして考えて行けば良いのか掴むことは難しい。
言い換えの場合だが、主に以下の種類がある。以下、小論文でよく使われるもののみを紹介する。
1. 難しい抽象論を、簡単に理解できる抽象論に言い換えている場合
2. 難しい抽象論を、簡単に理解できる具体例に言い換えている場合
3. 難しい具体例を、簡単に理解できる抽象論に言い換えている場合
4. 難しい具体例を、簡単に理解できる具体例に言い換えている場合
5. 深堀をし、話の範囲を狭くとることで、理解しやすくしている場合
6. 俯瞰的に見て、話の次元を広く取ることで、理解しやすくしている場合
言い換えには、おもにこの六種類がある。このいずれかのテクニックを使い、なぜ「測定不能」という文字を「衝撃的な文字」と受け止めたかをまとめることが大切である。
設問2.
「失明した社会」とは、どのような社会のことか? という問いから逃げずに真っ正面から取り組む事が必要である。えてしてこういう定義を問う問題を解いていると、話が本筋から離れて行く事が多い。そうではなく、真っ正面から話の本筋に沿った話を書いて行かなければならない。
□ 課題文の読み方(一段落一行要約)
・ 一粒の錠剤が、恐るべき毒物に変質していく。
・ 私たちが生きる「市民社会」とは、戦時体制の遺産を密かに、あるいは公然と引き継ぎながら変態を遂げたもの。
・ 薬害被害者の極限まで狭まれた視界を映し出すのは、日本経済の高度成長過程そのもの。
・ 視野図の表示の中に、「測定不能」という衝撃的な文字が現れて来る。
・ この社会が自己の欲望を貫くことによって生み出した生活破壊は、その社会形態に相応して「測定不能」という冷徹な表記によって示される。
・ この薬害は、どういうからくりでどういう無茶苦茶をやったのかという「行為の悪性」が問題。
・ この社会における「行為」のあり方を問わなければ行けない。
・ 中身を問わず何事かを行うこと、何かを作り出す事それ自体に対して肯定的な社会が前提とされている。
・ たえず何事かを行うことを肯定する社会は、自己への加害から逃れられない。
・ 一個の錠剤があぶり出していく情景とは、関係の基礎をなすべき信頼によって仲立ちされない「社会」の有り様である。
・ この経済社会の振る舞いは、物事を徹底的に対象として扱う思考の帰結である。
・ 映画で薬害被害者を撮影することで、人々の暮らしを蝕み破壊する社会的諸力を捉えようとしている。
・ “失明した社会”を生きて行くことの堪え難い苦しさ難しさをこの映画は静かにしかし痛切に提示する。
□ 解答の指針
設問1.
これを80字で表現することは難しい。
一段落一行要約の中には、残念ながらこの問題に答えるための十分な情報がないので、もう一度この「測定不能」という言葉が出て来るあたりの文章を読み直そう。
・ 測定不能。これが物理的計量と計算を規準とする社会、つまりこの測定社会が産み落とした事態なのである。
・ この社会が自己の欲望を貫くことによって生み出した生活破壊は、その社会形態に相応して「測定不能」という冷徹な表記によって示される。
・ 私たちが陥っているのは、測定の果ての状態。
このあたりの表現から、「なぜ筆者は”測定不能”という文字を、”衝撃的な文字”として受けとめたか」という問いについて述べる。
このような、なにかを説明する問題については、論じている訳ではないが、いちおう疑問になっているので、以下のような形で答える。
1. 議論の前提
→ この社会が自己の欲望を貫くことによって生み出した生活破壊は、その社会形態に相応して「測定不能」という冷徹な表記によって示される。
2. 問題発見
→ なぜ筆者は”測定不能”という文字を、”衝撃的な文字”として受けとめたか
3. 原因の分析
→ なにかを測定しようという考え方そのものが、物理的計量と計算を規準とする社会、つまりこの測定社会が産み落としたもの。
4. 解決策の提案
→ 私たちが陥っているのは、測定の果ての状態。
5. 解決策の吟味
→ 測定という概念から導き出された表現なので、これは正しい。
基本的には、80文字しかないので、これらの内容を、
1. 結論
→「測定不能」という文字そのものが測定社会が産み落としたものである。
2. 要約
筆者は、測定社会の果ての状態であると受け止め、衝撃を受けている。
3. 具体例
薬害が、
の順に書くしか無い。表現の関係で一部順不同になる。
設問2.
まず、「失明した社会」という表現について考えてみることにする。どれが主語で、どれが対象語かという話だ。まず、主語は社会である。動詞は失明したである。社会が失明しているわけである。
では、社会が、なにが見えなくなっているのかというと、人々の暮らしを蝕み破壊する社会的諸力や、どういうからくりでどういう無茶苦茶をやったのかという「行為の悪性」、中身を問わず何事かを行うこと、何かを作り出す事それ自体に対しての否定的な考え方が見えなくなったということである。このことを説明する、とあるか論じると同義にとっても構わないだろう。
この場合は、例によって、以下のフォーマットを使う。
1. 議論の前提
→ まず、「失明した社会」という表現について考えてみることにする。どれが主語で、どれが対象語かという話だ。まず、主語は社会である。動詞は失明したである。社会が失明しているわけである。
2. 問題発見
→ 「失明した社会」とは、どのような社会のことか?
3. 原因分析
→ では、社会が、なにが見えなくなっているのかというと、人々の暮らしを蝕み破壊する社会的諸力や、どういうからくりでどういう無茶苦茶をやったのかという「行為の悪性」、中身を問わず何事かを行うこと、何かを作り出す事それ自体に対しての否定的な考え方が見えなくなったということである。
(余談だが、なぜなぜ分析のほかに、このように原因らしきものを列挙し、その中で重要なものを選んだり、概念化したりすることで解決策を探るという考え方もある。)
4. 解決策
→ 3.で述べた事を一言でまとめる。この経済社会の振る舞いは、物事を徹底的に対象として扱う思考の帰結、あたりの表現を使う。
5. 解決策吟味
→ 全体を見通して良い表現がないか探す。
□ 模範解答
設問1.
「測定不能」という文字そのものが測定社会が産み落としたものである。筆者は、薬害が、測定社会の果ての状態であると受け止め、衝撃を受けている。(70文字)
設問2.
まず、「失明した社会」という表現について考えてみることにする。どれが主語で、どれが対象語かという話だ。まず、主語は社会である。動詞は失明したである。つまり、社会が失明しているわけである。
では、社会が、なにを見えなくなっているのかというと、省庁や製薬会社に代表される人々の暮らしを蝕み破壊する社会的諸力や、こうした勢力がどういうからくりの商業的思考でどういう無茶苦茶な薬害事件を起こしたのかという「行為の悪性」、社会の中で中身を問わず何事かを行うこと、社会の中で何かを作り出す事それ自体に対しての否定的に考えるということ、などが見えなくなったということである。薬害という経済社会の振る舞いは、物事を徹底的に対象として扱う思考の帰結なのだとしたら、社会はこうした物事を徹底的に対象として扱う思考の欠点・弱点に対して失明したのである。(364文字)

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