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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 2011年 解説

問1

 資料1から資料6を参考にして,君が日本をデザインするとき,1)どのような日本を良い日本だと考えますか,2)その根拠となる価値観はどのようなものですか,3)実現のためのプロセスと実現のために君自身ができることあるいはしたいこと,の三点を説明してください(1から3の内容を含んで800字以内,解答欄の枠内であれば図を挿入してもかまいません)。

 問2 

 問1の解題の過程で考えた,君の「総合政策学的アプローチ」とは何かを述べてください(600字以内,解答欄の枠内であれば,図を挿入してもかまいません)

・ 問題の読み方

 問一については、そのままの順序で書くとまとまりのない文章になるので注意しなければならない。5STEPsの中に必要な要素を入れ込む形にしなければならない。

議論の整理……日本の現状での問題点と、議論の分かれる問題についてのまとめ
問題発見……その上での自分が考える最も大きな問題点について(これを裏返すと、1)どのような日本を良い日本だと考えますか,2)その根拠となる価値観はどのようなものですか、が説明できる)
原因分析……そうした問題が起こる原因について
解決策……そうした原因の解決策について(ここに、3)実現のためのプロセスと実現のために君自身ができることあるいはしたいことが入る)
解決策の吟味……解決策の利害関係者や、他の解決策の検討

 問二については、従来の問題解決方法の問題点を提起し、解決策として総合政策的アプローチを提起し、まとめる形の問題である。

議論の整理……問題解決手法の整理と、個別学問型アプローチと総合政策的アプローチの違い
問題発見……なぜ個別学問型アプローチには問題があるのか?
原因分析……その原因の分析
解決策……その解決策としての総合政策的アプローチの提案
解決策の吟味……その利害関係者検討や他のアプローチとの比較

・ SFC小論文で求められている解答への指針

 問一については、問二との接続もあり解決策をさまざまな学問分野から検討し尽くした学際的アプローチにする必要がある。

 また、問二については、総合政策学的アプローチについての説明であるので、これは学際領域など考えずに、学際領域の考え方を使った思考をそのまま書けば良い。

・ 模範解答

問一

……この問題では、課題文を使う部分はあまり無いと考えて良い。

議論の整理……
 今日の日本では、少子高齢化が問題となっている。
 子供を生み育てる世代は、今や二つに分断されている。一つは、マイルドヤンキーといわれる子供を生み育てることを躊躇しない子育て世代である。一般にこうしたセグメントは、出産などをきっかけとして結婚し、子育てをする傾向がある。そもそもの教育意欲が低いため、教育費が掛からず、結果子育てに対する躊躇も少ない。一方、一般的にエリートといわれるセグメントであればあるほど、子育てを躊躇する傾向がある。こうしたセグメントは、比較的高学歴であるため初婚年齢が高いことや、子供にかかる教育費の問題から出産を躊躇する傾向がある。
問題発見……
 このことから、少子高齢化は、教育費の高さが問題になっている側面があることがわかる。
原因分析……
 教育費が高い原因の一つは、公立学校の不甲斐なさだ。教員免許制度により保護された公立学校はいまや教育機関としての機能を果たしていない。結果として、経済的に余裕がある家庭は、民間企業が経営する学習塾に子供を通塾させ、こうした教育機関を主な学習機会としている。
 このことにより、学習塾に通える子供と通えない子供による経済格差による学力格差が極めて進行しているのが現在の日本の教育の特徴である。
解決策……
 こうした問題の解決策は、すべての公立学校を完全民営化し、学習塾が行う教育に国庫からの惜しみない援助を行うことである。このような政策を行えば、出産の際に教育費を心配する必要はもはや亡くなる。その結果として、安心して子供を生み育てられる社会が到来し、現在の出産者の3人に1人が中絶を選ぶという状態を打開し、少子高齢化に歯止めをかけることができる。
解決策の吟味……
 この解決策により従来の学校の教職員の雇用は守られなくなるかもしれないが、現状介護分野などで大きな人員不足が生じているためそうした産業への転職を支援すればよい。こうした労働力の柔軟な移動こそが変化に対応する社会の第一歩となる。

問二

……この問題では、課題文を使う部分はあまり無いと考えて良い。強いていうと、資料4・資料6の議論が参考になるので、以下引用する。

資料4の議論

 だがこのパラダイムは崩壊した。「部分」対「部分」の競合は消耗戦となり,持続的競争力を生まない。また資源の重複を生み,全体効率を低下させる。そもそも「部分最適」ができない会社は生き残れないが全体最適ができなければ勝ち残れない。

 反省すべき点がある。従来の日本企業の経営スタイルは「事業部運営」が主流だった。それは各事業部の総和で行うものだ。それが過度の部分最適をもたらした。対して「会社経営」とは,事業部の利害を超えた全社最適を実現することだ。著名な経営学者のゲイリー・ハメル氏が『経営の未来』で,業務や製品のイノベーションより「経営」のやり方自体のイノベーションが必要だと説く点に耳を傾けるべきだ。

 経営は過去志向ではなく未来志向である。では未来に向け「失われた年」の呪縛(じゅばく)からどう脱却すべきか。第一に,人材育成を変革すべきだ。企業は90年代,それまでのジェネラリスト型人材を否定し,スペシャリスト型人材の育成に注力した。80年代の総合型経営から90年代の自律分権型経営モデルに転換するためである。今後,部分最適型から全体最適型経営に舵(かじ)を切るには,それを担う人材の育成が焦眉(しようび)の急である。「組織は戦略に従う」とともに「人材も戦略に従う」のだ。

資料6の議論

・「あるものの探究」と「あるべきものの探求」

 17世紀に誕生した近代科学は,人間が立てた目的や求める価値を知の営みから切り離し,純粋に客観的な立場から自然を探求する立場を取った。この立場は知の合理性を高めることに大きく寄与し,自然科学だけではなく法学,経済学,社会学など人文・社会科学系の分野にも受け継がれた。「あるものの探究」は知のひとつの基本範型となった。一方で人類は,近代科学の誕生以前から,その知的能力を用いて農耕技術,建築術,医術などさまざまな実践的な技術を獲得し,自らの生活や社会を向上させてきた。技術は目的や価値を実現するための,「あるべきものの探求」であり,近代科学によって合理的な基盤を与えられはしたが,知の営みとしては一段と低い地位に置かれた。「実学」という呼称はこのことを象徴している。しかし,人類が直面する深刻な課題を解決するためには,「あるものの探究」である科学と「あるべきものの探求」である技術が統合されなければならない。それこそが学術の真の姿である。

・認識科学と設計科学

 「あるものの探究」を主な目的として発展してきた従来の科学を「認識科学」と呼ぶとすれば,「あるべきものの探求」を目的とする知の営みには広い意味での「設計科学」という呼び名がふさわしい。設計は一定の目的と価値の実現を目指すものであるから設計科学は目的や価値を正面から取り込んだ新しい科学でなければならない。一方,設計は人間のためのものであるから,設計科学の対象は人工物システムである。人工物システムは人間の全体性を現しており,領域に細分化された認識科学とは異なって分野を横断する統合を強く志向する。すなわち,認識科学を縦糸とすれば設計科学はそれらを結びつける横糸である。認識科学と設計科学を車の両輪とする新しい学術の体系を構築することは,社会のための学術を実現する。

議論の整理……
 物事を学問的に考察する手段は二つある。一つは、個別科学的アプローチであり、こうしたアプローチは現在の学問領域では主流である。一方で、総合政策学的アプローチは、アメリカの一流大学などで導入されているアプローチであり、多様な学問分野からの批判・検証により、新たな知見を生み出すことで知られている。具体的には、コンピュータープログラミングで生物の細胞の動きをシュミレーションする技術などは、コンピュータープログラミング分野の知見と、生物学の知見が生かされている。
問題発見……
 個別科学的アプローチの問題点は、しばしば全体にとって最適な問題解決ではなく、その学問分野にとって最適な解を最善とすることである。たとえば、経済学的な効率性だけを最重要視して政策を立案した場合、それが憲法で保証されている基本的人権などを侵害する可能性があっても、経済学的に最適であるという理由だけから促進されてしまう危険性がある。
原因分析……
 しばしばこのような誤謬が見られるのは、個別科学が全体最適でなくその学問分野にとっての部分最適を探求してしまう点に原因がある。
解決策……
 こうした個別科学的アプローチの問題点を解決するためには、ある問題解決に際しては、さまざまな学問領域からの批判を行えるようにする必要がある。そのために必要なアプローチとして、総合政策学的アプローチがある。たとえば、今回の事例では、行政法や教育関連法的に正しい解決策ではなく、教育経済学の視点からの教育の費用便益を検証した結果このような解決策に至った。また、雇用の流動化に関する提言も、行政法的な観点から十分な配慮を加えた。
解決策の吟味……
 このように多数の利害関係者を調整し、他の解決策への目配りをする上でも、総合政策学的アプローチは極めて有用である。

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