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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2014年 解説

湘南藤沢キャンパス (SFC) 開設25周年を記念して、シリーズ『地球と人間』が 出版されることになり、その準備がはじまりました。あなたは、高校生編集者として、 このシリーズのうちの一冊の本を編集することになりました。

 あなたが編集を任されたのは、異なる作者による文章を集めた本で、あらかじめ 以下の【A】 ~ 【I】の9つの文章が、収録される候補として選ばれています。た だし、ページの分量制限があるため、本に収録できるのは9つのうち6つの文章です。 本は、あなたが書く「はじめに」という文章と、6つの文章で構成されます。

 あなたは、どの文章を選んで、どのような本を作りたいと思いますか?あなたな りの問題意識にもとづいて、本の構成を提案しましよう。

(編集の都合上、文章 【B】 は省略しています)

問題1

 まず、【A】~【I】の文章に、それぞれ小見出し(短いタイトル)をつけてください。

問題2 

 あなたなりの考えにもとづいて、本に収録する文章を6つ選んでください。なお、 どの文章を選ぶかについては、採点の対象とはなりません。あなたの発想で、自由 に選んでください。

(1) 選ばなかった3つの文章のアルファベットを記入してください。

(2) 3つの文章を選ばなかった理由を、300字以内でまとめてください。

問題3

 あなたは、「はじめに」という文章を書いて、選ばれた6つの文章を通じて読者に 感じ取って欲しいことを伝える必要があります。 編集者としてのあなたの考えを紹介しながら、この本の読者に伝えたいことを、 1000字以内でまとめてください。

問題4 あなたが編集する本に、タイトルをつけてください。次々と刊行される予定の、シリーズ『地球と人間』にふくまれる一冊として、魅力的なタイトルを考えてください。字数は、記号をふくめて25文字までとします。

・ 問題文の読み方

 この手の問題の鉄則は、文字数が長い順から解くことである。なぜなら、小論文というのは一種筆算に近いところがあり、当初の仮説構築(≒暗算)も、紙に書いて計算しているうちに変わりうるからである。本来優れたテキストの書き手というのは、小論文を書く前と書いた後では意見が異なっていなくてはならないとさえ考えている。

 1については議論をする上で必要なので予め書く必要があるが、その次は3を演習し、その後その結果に基づき2を執筆し、最後に4を執筆するのが効率的な執筆法である。

・ SFCが求める解答への指針

 1.については議論の整理をするためだけの問題なのでさほど重要ではない。文章を1ページごとに読んで、大体の内容をまとめるのみで良い。さぼと点数にも影響しない。

 3.については、問題全体を見渡し、どの課題文を抜くか考えながら構成する必要があるが、抜く課題文を選ぶヒントになるのは、「地球と人間」というタイトルである。つまり、地球規模ではない問題を選べば良い。

 その上で、3については5STEPs、2については結論・根拠・具体例でそれぞれの問題に沿った内容を掛けば良い。特段オリジナリティーを出せる問題ではないが、そもそもの問題が難しいので正答できる人は少ないだろう。

・ 模範解答

問題3
選ばれた6つの文章
B 環境レジームの形成・強化の進展
C 理屈が「現実」をつくる
D 相互依存システムとしての生態系
E SF小説が空想する社会像
H オゾン層破壊の人為性が実証された経緯
I 経済の法則と地球の法則

議論の整理→それぞれの課題文を接続して5STEPsの構成を取るように整理する。前書きという構成上、そういった形での整理をすることが最もふさわしい

 この本の狙いは、全地球的な環境問題をいかに解決するか、という点に集約される。このテーマを議論するために、まず現状から問題を発見し、その上で原因を分析し、解決策を提起するという章構成を採っている。
 まず、私達が直面しなければならない問題の発見については、Dで植物の事例から具体的に紹介し、Hでは現在の数値を交えて具体的に紹介している。その上で、Eを掲載することで今後の地球環境の変遷を予測している。さらに、現行の経済システムと環境保護のあいだには大きな矛盾があることをIで指摘し、その上でそうした齟齬を乗り越えることの必要性をCで強調し、そうした取り組みをBで紹介している。
 次に、強調しておきたいこととして、D,H,Eからわかるように、私達の地球環境は大きな危機を迎えていることに問題意識を置きたい。その主な原因は、Iで述べられているように、現行の経済システムと環境保護のあいだには大きな矛盾が生じているためである。

資料D

 もう一つの重要な側面は、さまざまな植物や動物の出現にともなって、それらの死骸を 食物あるいは栄養源として利用し分解する多数の菌類やバクテリア、あるいは土壌動物が 出現したということである。そして、これら分解者としての生物も、土壌中の異なる場所 で異なる種類の死骸を独自の方法で分解することにそれぞれが専門化し、多様になってき た。菌類は全体として、陸上の植物の遺体に残されたセルロースやリグニンを分解する生 理特性を発達させることによって発展したグループである。一方、土壌表面や土壌中の生 物の間にも、食う、食われるの食物連鎖が発達し、多様性は増大することになった。

 菌類やバクテリアなどが分解してできる無機物は、栄養分として根から吸収されて植物 に再利用される。こうして、生産者としての植物、消費者としての動物、分解者としての 菌類やバクテリアなどが存在することによって、生物界は互いに生かし、生かされながら なりたっている。

資料H

 1985年、世界で最も有名な科学誌『Nature』に発表されたフアーマン他による論文は、 イギリス、ハレー基地で観測された1980年代に入っての成層圏オゾン量の急減と大気中 フロン濃度の増加を関係づけ、フロン (注3) によるオゾン破壊であると結論づけたこと で、オゾンホールの論文として栄誉ある地位を得た。 

資料E

 『日本沈没』に描かれたような政府は、現実には存在しない。自己保身に走らず、見返 りも期待できないのに国民のために努力する政府高官や、滅亡することがわかっているのに、最後まで効率的に機能する国家システムなどといったようなものは、虚しい幻想にす ぎない。存在しない「理想」を描くことで、小松のSF小説は、それが欠落している現実 を告発していた。

資料I

 経済学者はこう語る。「価値ある相手に立ち向かうことによってのみ、あなたは効果的 に事を成し遂げるだろう。好結果を招く競争に対する報酬は、成長だ。敵対するものを一つ、 また一つと攻め立て、さらにそれを続行することで、次につながる資源を獲得するのだ」。 

 地球はこう語る。「競えばいい、そのとおりだ。しかし限界内での競争を維持しなくて はならない。戦争になってはいけない。必要なだけを手に入れる。競争相手が生きていく のに十分なだけは残す。どこであれ可能なら戦わず、協力する。互いに交感し、互いを護 る場所を作り、自分より小さいものを光の届く所まで差し上げるような堅固な構造を打ち 立てる。栄養を循環させ、活動範囲を分かちあう。優秀な種は競争から生まれるものもあ るが、その他は協力から発生する。あなたは争い事の中にいるのではない。いるのはコミュ ニティの中だ」。 

資料C

 それに対してぼくはこう答えていた。人間はどんな意味であれ、きちんとした筋道がつ くとそれを信じこんでしまうということがおもしろかったので、そのことを笑ってやりた いと思って出したのです。わたしたちはこっけいな動物だということを示したかったので す、と。

 

問題発見→次に、前書きという構成上、この本がどのような問題を扱っているかを紹介する。この課題文中で扱われているものの、もっと中心的に扱うべきテーマ、扱い足りていないテーマを設定する。

 まずここで、なぜCにも述べられているように環境問題を解決する必要性は十分に検討され、Bで紹介されているように環境保護活動は近年ますます盛んになっているのに、Hで紹介されているように地球環境はますます危機的な事態を迎えているのか、を論じたい。

原因分析→課題文中の記述に沿って、原因分析を行う。

 その原因はひとえに、あらゆる環境破壊活動の「外部不経済性」にある。環境破壊においては、通常の財物の破壊と違い、破壊活動の主体はほとんど損害を被らない。こうした環境破壊活動の不利益はひとえに、破壊活動の周辺者のみに影響を及ぼす。具体的にいえば、産業廃棄物処理施設においては、社長や従業員はその施設がもたらす利益から施設から離れた住宅街で暮らすこともできるが、周辺の住民にはなんの利益をももたらさない。このように環境破壊活動は不利益が環境破壊者自らに及ぶことはなく、ただただ周辺者に及ぶのみであるという構造的な欠陥から、解決されることなく続いていくのである。

解決策・解決策の吟味→

 つまり、環境問題を解決するためには、環境破壊活動の主体に相応の責任を負わせなければならない。近年の排出権取引などはそうした取組の一つであるが、これは環境破壊活動の抑制に相応の動機付けをもたらした点で画期的であるといえよう。経済システムと環境保護は両立しない、と諦めるのではなく、それらを両立できるような方法を考える事こそが最善であるという示唆を本稿は今後の世界に対して示している。(993文字)

問題2(1)
A 川の再生工事における地域住民の説得プロセス
F 被災地に赴いたカメラマンの戸惑い
G 日本の海岸の特徴

問題2(2)

 基本的には、結論…・根拠・具体例で書く。

結論→
 A~Iの文章は、それぞれ環境問題について扱っているが、A,F,Gに関しては日本国内の問題について扱い、それ以外は世界の隅々まで影響を及ぼす普遍的な問題を扱っている。

根拠→
 この本は、シリーズ「地球と人間」のうちの一冊として刊行される。この問題意識は、全地球的な問題をいかに解決するかという部分に集約される。

具体例→
 たとえば、Aであるが、これは全世界に共通する環境問題を解決するものではない。また、Fについても被災といういわば緊急事態における対応についての文章であるから、全地球規模の環境問題のような慢性化した問題の解決には資さない。他にも、Gの議論は、全地球規模で環境問題を考えるために相応しい題材ではない。(299字)

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