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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学SFC 総合政策学部 小論文 1998年 過去問

1998年 慶應義塾大学 総合政策学部 小論文 課題文

問1 次の7つの資料A, B, C, D, E, F, Gは, いずれもわが国が 当面している高齢化現象と。それによって生じると予想される諸問題を 述べたものです。解答欄に高齢化社会の政策課題を1つ挙げてあります が, これにならって。資料の論述に含まれるそれ以外の重要な政策課題 を3つ挙げなさい。 (解答欄:(例) 1.社会保障費などの公的負担増大への対応)

問2 問1に挙げた4つの政策課題のうちあなたが最も重要と考えるもの の番号を○で囲み。関連する資料の論述を踏まえて, それへの対処の仕 方について, あなた自身の考えを800字以内で述べなさい。

資料A

<高齢化の進行と労働力・社会保障負担等に及ぼす影響>

注) 棒グラフ:社会保障給付費 折れ線グラフ:国民負担率 (<社会保障負担+租税負担> の<国民所得>に対する比率(%))

(総務庁『高齢化社会白書 (平成9年版)」より抜粋・編集)

資料B

 我が国の人口構造は急速な高齢化の過程にあるが, その原因として次の 二つが挙げられる。まず第一に。大正の末から昭和25年頃までのわずかな 期間に, 多産多死の状態から多産少死の時代を経て。少産少死の状態への 人口転換が起きたことであり, 第二に, 生活水準の向上や医療技術の進歩。医療保険の充実等により長寿化が著しく進展したことである。これらの人 口構造の変化は, 以前に比べて個人の高齢期の位置付けや意味を大きく変 えることになった。

 そこで。各世代の経験した経済社会状況の変化を大まかにみると, 現在 の高齢者世代である「多産多死型」世代の男性の多くは徴兵されて戦場を 経験し。戦後の混乱期や高度経済成長期には働き盛りの世代として経済発 展を支え, オイルショックの前後に第一線から退いていることがわかる。つまり。戦前・戦後の貧困から急速な経済社会の発展までの変化を一代で 経験した世代であるといえよう。

 また。現在の中年世代を含む「多産少死型」世代は戦後の復興期に少年 期を過ごし。結婚生活や育児に入る頃には高度経済成長期を迎え。その中 で生きてきた世代である。さらに。新人類や団塊ジュニアを中心とする「少 産少死型」世代は平和な時期に生まれ。物心ついた時から豊かさを享受で きた世代である。 平成7年(1995年)における高齢者の構成割合をみると, 「多産多死型」 世代が6割強に対して「多産少死型」世代が3割強を占めることになるが、 平成27年 (2015年)には「多産少死型」世代が9割以上を占め, 平成37 年 (2025年)には「少産少死型」世代の割合が4割強になると予想されて いる。それゆえ, これから高齢社会を構成する世代の行動や意識が, 今後 どのような影響を与えていくかについて考えることが必要であると思われ る。

  現在の若者世代は, 中年世代が高齢者全体の9割を占める平成27年 (2015年)頃の社会を支える中心的な役割を担っていくことになると考え られるが。老年人口比率の高まりによりこれらの世代の負担はますます高 まっていくものと思われる。

 一方。厚生省人口問題研究所の人口推計によると。生産年齢(15~64歳) 人口はその間低下し続けるものと予測され。若年労働力人口の減少は企業 と個人の関係をこれまで以上に大きく変えていくものと思われる。個人の 意識としても, 従来の日本型雇用慣行の一つである年功序列賃金から能力 給への切り換えに肯定的な者が多くなっており。企業の側からも近年個人 を尊重する動きが目立ってきており, これらの動きは今後さらに進むものと考えられる。

 このような個人の能力を重視する制度が進めば、個人の生活設計ももっ と柔軟なものになると考えられるが, そのためには自分自身の能力を磨く ための努力が今後一層必要になり, そのための情報や場の提供が今後ます ます求められることになろう。

(経済企画庁『国民生活白書 (平成6年版)」より抜粋・編集)

資料C

現在の日本では。さまざまな形での高齢者に対する保護政策が行われている。 会的公正の達成のために「弱者」を保護することは。経済全体の資源配分の効率化と並んで。政府の重要な政策目標である。しかし, 貧困者や 傷病者など。社会的な救済を必要としている本来の「弱者」の範囲を超え て, 年齢という外形的な基準のみによって区別される「高齢者」という集 団を対象とした政策には, さまざまな問題が生じる。

 まず。「高齢者」に対する保護政策が, 高齢者の経済的な活動の妨げとな り,結果的にその自立性を阻害する可能性である。例えば60~64歳層につ いて, 一定以下の賃金水準の高齢者のみに給付される厚生年金の「在職老 齢年金」制度は。高齢者の就業を抑制する大きな要因となっている。また, 機械的に定義された高齢者層一般を対象とした財政政策は, 必ずしも経済 的な保護を必要としない者にもその便益が及ぶ点で, 非効率的な政策手段 となる。また, その結果, 本来の「弱者」のための政策が, 財源上の制約 から。結果的に不十分なものとならざるを得ない。

 特に, 高齢者の保護政策の場合には, 以下のような点に大きな特色があ る。第1に, 「高齢者」の経済的地位の変化である。かつてのように労働所 得が家計の主要な収入源であった時期には, 働く能力が低下した高齢者の 大部分は, すなわち「経済的弱者」であった。しかし, 現在では。例えば 年齢が65歳以上の人々を一つの集団として捉えると,その平均的な所得や 資産保有の水準は, 必ずしも社会の平均水準と比べて低いわけではない。 これは。戦後の高度成長のもとでの国民の経済水準の高まりや。公的年金・ 医療など社会保障の充実, および土地など資産価格の高騰が。いずれも高齢者の経済的地位の大幅な改善に貢献したためである。

 第2に, 高齢者の生活水準の多様性である。上記のような高齢者の平均 的な経済的地位の向上にもかかわらず。その内部での所得・資産格差は一 層拡大しており, 豊かな高齢者層と貧しい高齢者層への二極分化が進行し ている。また, 高齢者の生活上の最も大きな不安は病気や寝たきりの状態 に陥ることであり, 健康か否かで。その生活水準に大きな開きが生じる。 さらに。高齢者の生活の豊かさは, その家族との関係でも大きく異なり, 子供世帯との同居者。高齢者夫婦, および単身者, などでは大きな差が生 じている。

 第3に, 保護政策の対象としての高齢者層は, 農業や流通業などの従事 者の場合と異なり。年々増加していくことである。65歳以上人口の比率 は,1960年の6%から1995年には15%弱に。さらに2020年には27%程度 まで高まる。また。高齢者世帯の全世帯に占める比率も, 1970年の4%か ら1994年には13%に, さらに2020年には37%弱にまで高まると見られ る。この結果, 伝統的な定義に基づく「高齢者」が, 社会の少数者に過ぎ なかった時代に設けられた制度や政策を, 高齢者が人口の4分の1を超え るようにまで大幅に増加した時期にそのまま適用すれば, 公的部門を通じ た所得再分配の規模を著しく拡大させ, 経済活動に大きなマイナスとなろ う。

 こうした状況を改善するためには, 以下のような方向への政策転換が必要とされる。

 第1に, 社会保険における「保険原理」への回帰である。まず, 公的年金保険では, 高齢者の平均余命の伸長に対応して, 年金給付の支給開始年 齢の引き上げを弾力的に行うことが基本となる。また, 現行の在職老齢年 金のように, 受給者の所得水準を年金給付の条件に結びつけることは, 高 齢者の就業を抑制し, 長期的に年金財政の悪化に結びつくマイナス効果の 大きさを考慮する必要がある。また, 医療保険においては, 人々の生活を 脅かすような重度の疾病を十分にカバーし, 軽度のものについては自己負 担比率を高める方向への改革である。

 第2に, 年齢のみによって定義される「高齢者」を画一的に取り扱う従 来の政策から。高齢者層内部での所得・資産格差を是正することである。高齢化社会にふさわしい税制改革は、何よりも高齢者層のみを対象とした 課税の特別処置の撤廃による所得税の課税ベースの拡大である。また、こ れと同時に、年金や資産所得と給与所得との間の、所得捕捉も含めた公平 性の確保が必要とされる。

 最後に、特定の年齢層に対して、年金・医療・雇用保険など個別の政策 を通じて行われる所得再分配を、身体障害者や母子家庭など、高齢者以外 の生活困窮者を含めた。全体としての国民生活の安定を図るための「安全 弁」としての政策に拡大させる必要がある。 (八代尚宏、伊藤由樹子「高齢者保護政策の経済的帰結」。

(八田達夫・八 代尚宏編 『「弱者」保護政策の経済分析」所収より抜粋・編集)

資料D

 一般に、いかなる政策課題および対応策においても過渡期の処理がもつ とも難しい。高齢化社会論または長寿社会論にも二重の過渡期が存在する ということができる。

 一つの過渡期は、わが国でいえば、人口の年齢構成の高齢化プロセスが 進行し、ほぼ定常状態に達する2020年頃までの人口変動面における移行期 である。もう一つの過渡期は、長寿社会論の説く「人生80年時代」にふさ わしい新しい経済社会システムが、それを選択・利用できる比較的若い世 代の高齢化によって成熟するまでの経済社会システム面における転換期で ある。現在、高齢化社会論で主として論じられているのは、前者の人口変 動面に関する移行期であり、長寿社会論になると、実は、この人口変動面 の移行期さえ十分に意識されているとは言い難いのである。

 田中直毅は、長寿社会を本来一人ひとりが長寿の生き方を選びとる選択 の時代と位置づけ。その障害となっている現在の硬直的な経済社会システ ムを |人生80年時代」にふさわしい柔軟なシステムに転換・設計する必要 性を訴える。たとえば、社会の変化に対する適応力を常に形成するための 労働時間の短縮(余暇の活用) や労働市場の流動化。年齢や世帯構成の変 化に適合した居住環境を選択するための住宅市場の流動化。後の世代の負 担や企業の拠出に依存せずに自ら老後の所得保障を行うための公的年金の 積立方式化や個人年金の充実などである。田中の議論の狙いは、長寿社会へのシステム転換を説くことによって高齢化社会論の閉塞状況をまず切り開くことにあり, 新しい経済社会システムの構想は必ずしも体系的ではな い。

 これに対して, 86年6月に閣議決定された「長寿社会対策大綱」および 総務庁長官官房老人対策室のフォロー・アップ報告や「人生80年時代の新 たな社会経済システムのあり方」に関する国民生活審議会の報告である経 済企画庁国民生活局編『長寿社会の構図」は, ①雇用・所得保障, ②健康・ 福祉。③学習・社会参加, ④住宅・生活環境の四つのサブ・システムから 構成された。長寿社会にふさわしい新しい経済社会システムの体系的な構 想を試みている。強調すべき点は。以下取り上げるような各サブ・システ ムにおける新しい重要な改革構想が,

 たとえ, 直ちに実現したとしても。 現在の, あるいは, 近い将来の高齢世代にはほとんど無縁なことである。 しかも, そうした重要な改革構想が直ちに実現するとは考えにくい。実現 が遅れれば遅れるほど。旧システムに依存せざるをえない比較的高齢な世 代が累積し, 新システムが成熟するまでの転換期はそれだけさらに長期化 する。 たとえ, これらの諸提案が直ちに実現したとしても, 新システムをフルに選択・活用し, その成果を享受できるのは, これから人生設計を始める。 あるいは,やり直しのきく比較的若い世代に限られる。そして,88年版「厚 生白書」のいう「真に長寿を喜ぶことのできる社会」への到達には30年。 40年という長い成熟期間を要するのである。

 それ以上に重要なことは, 新システムを今更。選択・活用できない。あ るいは, あえて選択したとしても, その成果を享受できるだけの持ち時間 がない。現在および近い将来の高齢世代は旧システムに依存せざるをえな いことである。最悪の場合, 新旧システムの転換期において。高齢世代の 政治的発言力が極めて強く, 既得権の確保, すなわち。旧システムの維持 に成功するならば, 若年世代が新旧両システムの費用を二重に負担するこ とになり, 逆に, 若年世代の政治的発言力が極めて強く, 旧システムの費 用負担を拒否するならば, 高齢世代が新旧両システムから共に疎外される ことになる。公的年金を賦課方式から積立方式に転換すべきだ, または私的年金に切り替えるべきだといった単純な議論はこうした問題点を十分考慮する必要がある。

 もっとも。過渡期における二重の負担あるいは二重の疎外は、家族関係 を媒介とする相互扶助によって部分的にカバーされるであろうし。一部高 齢世代は市場ルート (私的年金や一般貯蓄)を通ずる所得保障の自助努力 によっても部分的に救済されるであろうから、リスクの過大評価と言わざ るをえないが、過渡期の処理方法としてはやはり避けなければならないで あろう。ここに、新しい経済社会システムの早期導入。そして。特に過渡 期の適当な処理に政府の主導的な役割が要請される根拠があろう。

(宮島洋「高齢化時代の社会経済学」より抜粋・編集)

資料E

 ー高齢化社会には暗いイメージがつきまとっていますが。

清家 まず、高齢化現象というのは日本社会が成し遂げた素晴らしい大成 果だということを強調したい。寿命が世界一、乳幼児死亡率が非常に低 い、お年寄りがたくさんいて飢えもせずに生活できるということは文句 なしに日本の経済、社会が成し遂げた大成果です。海外で生活した人な らばみなさん同意されると思いますが、どんな外国にいっても手放しで 自慢できるのが日本の平均寿命が世界で一番だということ。日本製の自 動車が世界で一番売れているといったことを自慢しても、それがどうし たと反感を買いかねない。しかし、平均寿命が世界で一番長いというと 無条件でそれはすごいと言ってもらえます。

 詳しく言うと、人口の高齢化には平均寿命が延びたことと、出生率が 低下したという二つの要因がありますが、この二つはともに経済成長の 成果です。現在でも、発展途上国では人口爆発が問題になっているよう に、子供をたくさんつくって労働力のあてにするという経済構造が戦前 までの日本にもあった。乳児死亡率の高かった昔は子供をたくさん産ん だという背景もあります。しかし、日本も豊かになるにつれ、人々は子 供の数を少なくし一人ひとりの教育におカネをかけ、質の高い子供を育 てようとするようになった。そういう意味で、出生率の低下は経済成長 の結果といえます。

 いうまでもなく、寿命が大きく延びたことは生活水準の向上を物語っています。一般的な健康水準が上がったのはもちろん, 高度な医療に資 源を注ぎ込むことができるようになった。これは, 経済成長があったか らにほかなりません。このように高齢化そのものは日本が世界に無条件 で誇れる成果だということを忘れてはいけない。

 もっとも, 高齢化が進むにつれ経済, 社会面でいろいろな問題は起き るでしょう。高齢化社会が無条件ではうまくいかないこともまた事実で す。重要なのは, 高齢化に合ったように社会・経済の仕組みを素早くつ くりかえていくことができるかどうかです。

 私は, 高齢化に伴うさまざまな問題を調整問題だと捉えています。高 齢化というのは年寄りがたくさんいる状態。その状態に行き着いてしま えば, 雇用でも社会保障でもそれに合うような合理的なシステムがつく りだされるはずです。問題は高齢者の比率がどんどんと増えていくプロセスにあります。高齢化が進む過程では高齢者が少なかった時代に効率 的だった仕組みがまだ残っているので, 古い仕組みと新しい人口構造の 間の摩擦が起こりやすい。古い仕組みをいかにすばやく新しい人口構造 に合わせていくかが問題なのです。

 ー高齢化に伴う成長減速を生産性向上である程度カバーできるにし ても, やはり高齢者の扶養や医療・年金など社会保障負担が若年世代の重 荷となるという声が多いですが。

清家 たしかに, 負担のあり方をめぐる世代間の対立などの問題も高齢化 のプロセスのなかでは出てくるでしょう。ただ, それも高齢化に伴う調 整問題の一部です。つまり, 高齢化が進むところまで進んで人口構造が 安定してしまえば, 負担をめぐる不公正というのは「個人が人生のいつ の時期にいい思いをするか」というだけの問題になり, 世代間の対立に はなりません。若い人が年寄りのために重い負担を強いられたとしても。 その人が年寄りになったときに同じ数の人口の若い人たちが負担してく れることがルールとして決まっていれば納得を得ることもできるでしょ う。そうなれば, 個人が若いうちいい思いをしたいのか。年をとってか らいい思いをしたいのかという時間選択だけの問題になります。

 問題はちょうどわれわれの世代がそうなんですが。年寄りが増えつづ けるときに負担をたくさんしてきたのに自分たちが年寄りになったときは、今度は若い世代が減って十分な報いを受けられないという世代が出 てくることです。われわれの世代は負担は非常にきつくなる一方、給付 は削られるという。割りを食う世代にあたり、不満が出てくるかもしれ ません。

 ただ。われわれが高齢者の扶養や社会保障のために高い負担をするこ とができるのは、高い生産性を上げているからです。なぜ高い生産性を 上げられているかというと、それはわれわれの世代だけの貢献ではなく て、いままでに蓄積された資本のおかげでもあります。そして、これま でに蓄積されてきた資本というのは、現在年金をもらっているような世 代の人が若い間に安い賃金で働き。しかもその乏しいなかから貯蓄をす ることによってまかなわれたのです。

 だから。いまの高齢者世代というのは、自分たちの貢献によってつく りあげた高い生産性の成果を後の世代を通じて受け取っていると考える こともできます。単に「われわれ現役の賃金から多額の社会保障費用が とられていてそれが高齢者にいってるのはおかしいんじゃないか」とす る議論は言い過ぎだと思います。われわれのもらっている高い賃金はい まの高齢者の貢献によって可能になった部分も少なくないのですから。 (清家篤「高齢化社会陰鬱論を排す」。日本経済新聞社編「異説・日本経済」所収より抜粋・編集)

資料F

 急性期の治療が修了して、入院治療の必要がなくなったにもかかわらず。 在宅介護に支障があるなどの理由で退院できないケースを「社会的入院」 と呼ぶ。雪の深い北海道や東北では、積雪期間中だけ入院する患者も多く。 社会問題化している。厚生省の推計では、一般病棟の長期(6か月以上) 入院患者21万人のうち、約6割、13万人に上り。年間の医療費はざっと6 千億円に達する。

 東京・杉並区の社会福祉法人・浴風会。広大な敷地に病院 (浴風会病院・ 300床)。特別養護老人ホーム。養護老人ホーム。軽費老人ホーム。在宅サ ービスセンターなどを抱える高齢者福祉の総合施設だ。大友英一・浴風会病院院長によると。この病院は、老人病院ではあるが、主として老人の急性期医療を担っている。それでも300床の30%に当たる 約百人が社会的入院であるという。最近の傾向としては, 受け入れる家族 がいない, 住宅が介護に適さない, などの理由よりも, 特養老人ホームの 空きを待つケースが多いという。

 それを裏付けるように, 都内の待機者は1万人を超える。在宅及び施設 ケアの遅れが社会的入院を増大, 放置させているわけだが, 「その背景に, 老人を大切にしなくなった社会の風潮がある。これはむしろ戦後の教育と 家族制度の問題です」と大友院長。

 首都圏の老人病院はじめ老人保健施設。有料老人ホームなどの情報を, ダイヤルQPで提供している老人病院情報センター (東京・渋谷区)。91年 の開設以来。問い合わせや相談は増え続けている。川添みどり代表は。「ど んな場合でも, 必ず一度は, 家で看られませんか。 と尋ねることにしてい ますが。家庭の事情による入院希望が少なくありません」と話す。中には 「老人ホームは世間体が悪いので。何とか病院に」「できるだけ遠くて長期入院できて, 見舞いに行かなくてもすむ安い病院を」といった。身勝手な 相談もある。

(読売新聞社編集局解説部編『超高齢社会」より抜粋・編集)

資料F

 少子高齢化の進展, 冷戦構造の崩壊, キャッチアップ経済の終焉。大競 争時代の到来, 生産年齢人口の減少など, 我が国の財政を取りまく環境は 大きく変容しているが, その中で財政は, 現在, 主要先進国中最悪の危機 的状況に陥っている。

 このような状況の下,21世紀に向けてさらに効率的で信頼できる行政を 確立し, 安心で豊かな福祉社会, 健全で活力ある経済の実現という明るい 展望を切り開くためには, 経済構造の改革を進めつつ, 財政構造を改革し 財政の再建を果たすことが喫緊の課題であり, もはや一刻の猶予も許され ない。

 このため, 先に内閣総理大臣より提示された財政構造改革五原則におい て, 当面の目標として, 2003年度までに財政健全化目標(財政赤字対GDP 比3%, 赤字国債発行ゼロ)の達成をめざすこと, 今世紀中の3年間を「集中改革期間」と定め、その期間中は、「一切の聖域なし」で歳出の改革と縮 減を進めることを決定した。これを強力に推進する。

1

 社会保障 社会保障関係費は、高齢化等に伴う当然増が見込まれる経費であるが 集中改革期間中は、当然増に相当する額を大幅に削減することとする。 具体的には賃金、物価の上昇に伴う単価の増等による影響分について制 度改革等により吸収し、効率化を図ることとし、対前年度伸率を高齢者 数の増によるやむを得ない影響分(全体の2%程度) 以下に抑制する。

(1) 医療については、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内とす るとの基本方針を堅持し、今後、医療提供体制及び医療保険制度の両 面にわたる抜本的構造改革を総合的かつ段階的に実施する。 9年度の医療保険制度改革は、抜本的構造改革の第一歩として早急 に実現する。

(2) 年金財政は現在の保険料率の水準のままでは将来の給付総額の約6 割しか賄えない状況にある。 このため、年金については、国民が将来にわたって安心できる制度 を構築する必要があることから、早急に国民的かつ徹底的な議論を開 殆し。11年度の財政再計算において、世代間の公平、高齢者雇用の在 り方といった観点を含め、給付と負担の適正化等制度の抜本的改革を 行う。

 (平成9年6月3日 閣議決定「財政構造改革の推進について」抄)

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