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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学SFC 環境情報学部 小論文 2001年 過去問

2001年 慶應義塾大学 環境情報学部 小論文 課題文

問題

 さまざまなデジタルテクノロジーを中核としたコンテンツ(資料1参照)やサービスが、次の時代を担うビジネス分野として注目されています。資料1~5を読み。21世紀の社会にどのように役立つかに言及しながら,デジタルコンテンツやサービスのビジネス企画を提案し,解答欄(1)に800字以内で説明しなさい。説明には,必ず携帯電話,エクスペリエンス,コミュニティのキーワードを全て含めなさい。さらに,(1)で提案した企画の広告をデザインし,解答欄(2)内(縦15cm×横17cm)に図示しなさい。

資料1 デジタルコンテンツについて

 一口にコンテンツといっても、その定義は難しい。映画館やビデオで鑑賞する映画,毎日家庭のテレビ受像機に流され続けている膨大なテレビ番組。書店に並ぶ雑誌や書籍。多種多様な新聞。CDやラジオで流される音楽ソフト,子供から大人まで夢中になるテレビゲーム,インターネット上に流通する情報。これらはすべてコンテンツということができる。

 コンテンツとは文字,映像,音楽などの情報素材を加工して制作されユーザーに届けられる情報商品と位置付けてみよう。瞬時に伝達,消費される金融情報などのコンテンツから,100年以上にわたって読者を獲得する文学作品まで、様々なジャンルのコンテンツが存在している。そしてこうしたコンテンツは,日に日にその流通量を増大させている。コンテンツ産業というべき業界が存在するとすれば,その成長は驚くべきスピードで達成されていることになる。一様には捉えることが難しいコンテンツを,日本マルチメディアフォーラムの刊行した『マルチメディアの現状と展望98』では以下の形態に分類している。

①マルチユースコンテンツ

 映画。アニメなどのように一度製作されたコンテンツが多様な流通経路で繰り返し消費されるコンテンツ。流通ルートの多様化で,マルチユースされる市場は急速に拡大している。

②蓄積型コンテンツ

 情報がデータベース化され,蓄積し利用されるコンテンツ。各種データベースサービス。電子図書館などが扱う情報が相当する。このジャンルのコンテンツは,他のコンテンツを制作する際の素材提供の意味合いを持っている。

③双方向型コンテンツ

 インターネットに代表される,情報を相互にやり取りすることで価値を持つコンテンツ。コミュニケーション型コンテンツとも言える。現在。爆発的に流通量が増えている。

④生情報型コンテンツ

 新聞やテレビのニュース,ロイターや共同など通信会社の提供する。速報性が売り物の情報コンテンツ。不動産や企業の採用情報なども含まれる。もともと新聞が扱ってきた情報分野であるが、その後,様々なメディア企業が誕生した。(中略)

⑤収集,更新型コンテンツ

定期的に情報を収集。更新することでデータベースとして活用できる種類のコンテンツ。旅行。地図情報などが相当する。

 これらのコンテンツを総合すると。『マルチメディアの現状と展望98』では,日本のコンテンツ業界の産業規模は,96年度で16兆円に及んでいる。今後さらに成長が見込まれることが予想され、コンテンツ産業は、21世紀の主要産業の一つに数えられることになる。(本文は,コンテンツビジネス研究会編『図解でわかるコンテンツビジネス』(日本能率協会マネジメントセンター)より抜粋・編集したものである)

資料2 家電製品とネットワークについて

 音楽,映像ソフトのネット配信。ネットバンキング。家のセキュリティ機能の遠隔操作。私たちを取り巻くあらゆるサービスがネットワークで結ばれようとしている。これに対応したAV機器や家電製品がすでに出荷され始めている。十年後には家電製品のほとんどに,ネットワークにつながる機能が搭載されることになるだろう。

 家庭やオフィスをネットワーク化しようとする試みは,1980年代後半から研究されてきた。その後のインターネットの急速な普及と機能性の向上は,パソコンのネット化をもたらしただけでなく,いまや家電製品のネット化を加速させている。さらに,現在N社が推進中の,各家庭に光ケーブルを敷く「FTTH」(FiberToTheHome)計画は,2010年に日本全国を覆う見込みだ。これにより,家庭に届く有線系のネットワーク容量は飛躍的に高まることになる。

 こうした将来図を見越し。住宅やマンションを設計段階から完全ネット対応にしようとする「住宅情報化配線」というコンセプトが現れた。この基本構造は,各家庭に外部との情報窓口である「情報分電盤」を設け,光ケーブルや同軸ケーブル,電話回線などを集約する。ここに,大容量のハードディスクを備えてデジタル情報を蓄積,各部屋に配信するという住宅のネット構造化だ。

 情報分電盤のハードディスクには,BSや地上波のデジタル放送番組が蓄積されビデオ代わりになるほか。病院や役所,新聞社,旅行会社,地域情報など各種サービスが随時蓄積され,好きな時間に使えるようになる。各部屋には,テレビ番組受信用と有線放送用の同軸ケーブルが二本,電話やファクス,ISDNなど通信サービスに対応した四対のペアケーブルが配線される。家庭内で高速ネットワーク化が整備されることにより,家庭内ネットに接続された家電機器は,部屋ごとの端末で操作,利用できるようになる。

 具体的なネット家電の応用例を考えてみよう。

 たとえば冷蔵庫。スーパーなどで購入した食品には,現在のバーコードに代わり磁気で商品名や品種。賞味期限などが入力された新世代バーコードが貼られている。スーパーのレジでは,いちいちレジ入力する必要がなく,買い物かごを磁気読み取り装置に乗せるだけで瞬時に料金を計算。それを冷蔵庫に入れれば,冷蔵庫内の磁気センサーが品目を読みとり,ドアのディスプレイに冷蔵庫に入っている品目や賞味期限、量などを項目別に表示する。

 この冷蔵庫がネットワークにつながると,携帯電話の情報サービスなどで冷蔵庫の中身を確認することができる。スーパーへ行ったときにアクセスすれば,「ああ,響油がないのね」「牛乳が古いわ」など効率良い買い物が可能となる。

 これは,すでに現実の応用例として各メーカーが研究を進めている分野だ。このほかにも、新聞の電子配信や遠隔医療・介護サービス,時間に制約されないオン・デマンド型のペイ・パー・ビュー・ムービー,ホームスクール,テレビ電話などあらゆるサービスが考えられており,これらはネットワークにつながったAV機器や家電製品から利用できる。

 家電製品のネットワーク化を進めるためには,ネットワークと接続するためのコネクターや通信規格などの統一が必要になる。すでにM社やS社など国内エレクトロニクスメーカーが中心となって規格統一の協議会を発足させており,家電のネットワーク化の準備を進めている。半面,住居をネット化するには家庭のインフラ投資が必要になる。従って,快適な環境を獲得するためにはかなりの資金が必要で,住宅ネットワークが完成しても一般の人からは“高嶺の花”となってしまう可能性も高い。(本文は,Foresight編集部編『次の10年に何が起こるか夢の実現か。悪夢の到来か」(新潮社)より抜粋・編集したものである)

資料3「エクスペリエンス」(experience)の価値について

 ー杯のコーヒーの価値にみるコモディティ化(注1)

 代表的なコモディティである,コーヒー豆について考えてみよう。先物取引では1ポンド=1ドルだが,それはカップ一杯につき1~2セントにつく(注2)。加工業者が豆を換勉き袋に詰めて。商品となってスーパーで売られるとき,価格は1カップあたり5~25セント(ブランドとパッケージの大きさにより異なる)となる。さらにその豆を使って入れたコーヒーがごく普通のレストランや喫茶店やバーで顧客に提供されると。そのサービスは一杯につき50セント~1ドルになる。

 つまり,企業がそれをどう扱うかによって,コーヒーは「コモディティ」「商品」「サービス」という3種類の経済的オファー(注3)のどれかになるのである。だが、この同じコーヒーも,五つ星の高級レストランかエスプレッソ・バーで出されると,消費者は一杯につき2~5ドルくらいの金を払うことになる。それは消費者がそのコーヒーを注文してから消費するまでの時空間においてすてきな雰囲気に浸るなど。劇場のような感覚を味わうことができるからである。

 この第四のレベルを実現した企業は「エクスペリエンス」という価値を創出していることになる。そこでは,コーヒー豆の購入に始まるその価値(つまり価格)の高度化が行われ。元のコモディティとしての豆とは二桁違う価値が実現されているのである。

 ある友人が。イタリアのベニスに着いてすぐに,妻と二人で楽しく過ごせる絶好の場所はどこかをホテルのコンシェルジュにたずねた。彼はためらいなく,サン・マルコ広場のカフェ・フロリアンを勧めた。二人は朝のさわやかな空気の中を歩いてカフェに到着し,湯気のたつコーヒーを飲みながら,ヨーロッパの都市の中でももっとも魅力的な風景と音の世界の中で心からくつろいだ。一時間後。二人は勘定書を受け取り,そのエクスペリエンスがコーヒー一杯につき15ドル以上もすることを知った。その話を聞いて、我々は友人にたずねた。そのコーヒーには,それほどの値打ちがあったのか?と。

 彼は「もちろんさ」と答えた。

ウォルト・ディズニーが創案した「エクスペリエンス」という価値

 サービスが商品とは異なるように,「エクスペリエンス」はサービスとは異なる。それは第四の経済的オファーであるにもかかわらずこれまでほとんど無視されてきた。「エクスペリエンス」はつねに身の回りにあるのに,消費者や企業。エコノミストたちは,それをドライクリーニングや自動車修理や卸売業や電話回線事業と同じようなサービス業に分類してきたのである。

 人がサービスを求めるときは、自分に対する一連の無形の役務を購入する。しかし,エクスペリエンスを買うときには,思い出に残すことに対価を支払い、それを提供する企業は(演劇の公演の場合のように)。その人個人を「エクスペリエンスという出来事」に招き入れる。エクスペリエンスはつねに、演劇、コンサート。映画。TV番組など。あらゆる娯楽の核心にあった。しかし過去数十年間に、さまざまな娯楽が多くの新しいエクスペリエンスを含むものへと大きく変貌を遂げた。それはある人物が一つの企業を設立したときに始まった。

 その人物とは、ウォルト・ディズニーである。ディズニーは、アニメに新しいレベルのエクスペリエンス的効果(同期録音、カラー。3Dの背景。ステレオ音響など)を重ねていくことで名をなした。彼の業績は1955年。カリフォルニアにディズニーランドを作ったことで頂点に達した。彼は1966年に亡くなったが、亡くなる前にウォルト・ディズニー・ワールドも構想しており、これは1971年にフロリダでオープンしている。それは、単なる新しい遊園地ではなく、世界最初のテーマパークだった。そこで「ゲスト」(「顧客」や「消費者」とは呼ばなかった)は、乗物に乗ることでもてなしを受けるのではなく、そこに展開する物語に身を浸した。さらに「キャスト」(「従業員」ではない)は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚に訴えかける作品をステージングし、それぞれのゲストに固有のエクスペリエンスを創出した。

(中略)

 かつてテーマパークといえばディズニーしかなかったが、今では、多くの競合が現れている。最新のテクノロジーは、インタラクティブ・ゲーム。インターネットのウェブ・サイト。動画によるアトラクション。3D映画。バーチャル・リアリティなど、ありとあらゆる新しいジャンルのエクスペリエンスをビジネス化している。たえず夢中になって没入するようなエクスペリエンスを実現するための。より高度な処理能力を求める傾向がコンピュータ業界の商品およびサービスへの需要を促進している。

(本文は、B.J.パインII、J.H.ギルモア著電通「経験経済」研究会訳『経験経済エクスペリエンス・エコノミー」(流通科学大学出版)より抜粋・編集したものである)

出題者注

注1コモディティ:原料、原材料。

注2ポンド:目方の単位。

注3経済的オファー:ビジネス形態。

資料4 携帯電話について

 携帯電話の初期型である「ショルダーホン」が登場したのは1985年。3キロもあった重さはいまや60グラム程度までに小型化し、単なる「移動電話」から「パーソナル情報端末」へと大きく変貌した。そして、IT分野の技術革新によって携帯電話は、さらなる変化を遂げようとしている。

 携帯電話の未来を展望するとき、発展の方向は「通話・通信能力」と「端末機能」。「応用アプリケーション(サービス)」の三つに分けられる。そのすべてが今後五年間で大きく進歩するだろう。

 まず、携帯電話の|通話・通信能力」の向上についてだが、現在、国内で主流のデジタル方式は、第一世代のアナログ方式に次ぐ第二世代で、音声品質や周波数の利用効率を大幅に改善させた。2001年春からN社が世界に先駆けて国内でサービスを開始する。「次世代携帯電話」は、第二世代のデジタル方式をさらに進化させたもので、高速大容量となりデータ伝送能力を飛躍的に向上させる。

 「次世代携帯電話」の機能的な仕様は、①地上固定網と同等なクリアな音声品質、②毎秒144キロから2メガビットのデータを転送できる高速データ通信、③世界中で同じ電話機を使える国際ローミング、などである。最大の特徴は、高速大容量のデータ通信を行なえることだ。これにより従来。音声や文字データに限定されていた携帯電話情報サービスで動画や高音質画像。音楽データなどを扱えるようになる。これは、携帯電話で利用できる「応用アプリケーション」の範囲を大幅に広げ、新しいサービスの登場を促す原動力となる。「次世代携帯電話」は当初、ISDN(総合デジタル通信網)並の毎秒64キロビット程度の通信速度でサービスを開始するが、数年以内に288キロビットまで高速化することになるという。

 携帯電話の利用者にとって、「端末機の機能」は数年前と比べ飛躍的に向上した。ポケットに入れても苦にならないほど軽量化した上。着信メロディーが和音になり。カラー液晶が搭載されるなど機能性とともに遊び心も充実してきた。今後はさらに情報ツールとしての機能が付加されるであろう。国内外の端末機メーカーの構想で特徴的なのは、①携帯電話にインターネット機能を搭載。②住所録やスケジュールなど個人情報を管理・編集するための統合型ソフトウェア「PIM」を搭載。③一層の小型軽量化。④本体と受話器部分を分離し無線で結ぶ。⑤ゲーム機能を搭載。⑥個人認証システムの搭載ーなどである。特に注目すべき

は「個人認証システムの搭載」で、指紋や瞳の虹彩を照合する機能を付加すれば、携帯電話のセキュリティを格段に向上させることが可能で、ショッピングのみならず携帯電話を利用した医療サービスや各種代行サービスなどが誕生する。

資料5コミュニティについて

 「コミュニティ」。

 1997年を迎える頃には、インターネットの世界だけでなく、その周辺においても、この言葉はひとつの流行語となっていました。本書の中でも。一般的なインターネットの世界でも。コミュニティとは、人々が生活し。仕事をし、遊ぶユニット(単位)の意味で使われています。多くの場合。個人は、インターネット上でも複数のコミュニティの中で暮らしています。現実の世界で、家族、教会、神社。サッカークラブ、専門家の集まり、仕事場と。複数の社会に属するのと同じことです。ルールと義務を重んじ。入会規準が設けられ、会費まで徴収するようなフォーマルなコミュニティもあれば、それほど形式にこだわらず、メンバーが常に代わっているような。ゆるやかな枠組みのグループもあります。世界が日増しに複雑に、抵抗すらできない状況になりつつある今、社会生活には不安があふれ、人々はコミュニティに仲間意識や心の安寧を求めようとしているのでしよう。

 使い方さえ間違えなければ、インターネットは、社会の発展を促す強力な技術となるでしょう。なぜなら。インターネットは、コミュニティ創生そのものを。人と人のコミュニケーションをサポートする道具だからです。インターネットの一つの利点は、住んでいる地域に縛られることなく、コミュニティを築けることです。ただ。共通の興味や目的を持った相手を探せばいいのですから。言葉を換えていえば、自分が生まれた地域に固執する必要はないのです。まったくというわけにはいかないでしょうが。インド在住のプログラマーは、Javaというプログラム言語の優位性について。シリコンバレーやブダペストにいる同僚と議論を交わすことができるわけです。

 インターネットは、時間に関わる諸問題も解決します。第一に、インターネットは時差を超越しています。第二に、たとえば、コミュニティセンターに実際に車を走らせるよりも、瞬時に電子メールを送ることができる点。インターネット上の電子メールは、文字通り、一気に世界を駆け抜けるのです。封筒と切手を探すよりも簡単で早くすみます。しかも。電子メールを発信するのは、あなたの好きな時間。相手も都合のいい時間を選べばいいのですから。今でも数多くのオンライン・コミュニティが存在していますが、これからも、無数に出てくるでしょう。探すのも簡単ですが。作ることだって比較的簡単です。

(本文は、エスター・ダイソン著吉岡正晴訳『未来地球からのメール」(集英社)より抜粋・編集したものである)

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