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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学 経済学部 小論文 2006年 過去問

2006年 慶應義塾大学 経済学部 小論文 課題文

[課題文]

近年における科学技術の進展にはめざましいものがあるが、その一つに。 遺伝情報の解明とそれに基づいた医学の発展が指摘できる。人間社会に寄 与するプラスの側面としては次のような諸点がこれまで指摘されてきた。

遺伝子上の情報にはさまざまなものがあり。そのなかには種々の疾病に かんする情報も含まれている。このような遺伝子を疾病関連遺伝子という。 こうした遺伝子はそれだけで疾病をひきおこすものは少なく、多くの場合 個体をとりまく環境との相互関係において疾病を惹起していると考えられ ている。各個人が自らの遺伝情報を知れば、疾病の可能性や。場合によっ てはその蓋然性の大きさについても推測できるので、遺伝情報が各個人に とって有益な情報たりうることは事実である。将来、ある疾病の発症可能 性がわかれば、それにたいして何らかの手を打つことはできるかもしれない。生活習慣の改善によって発症を防止したりあるいは遅らせたりすることは可能であろう。転ばぬ先の杖ということわざのとおりである。もちろ ん、なんらかの理由から自分の遺伝情報を知りたくない人はいるであろう。 そのような人は。遺伝情報を求めなければよいのである。

また、出産をひかえた母親がなんらかの疾病関連遺伝子を有した子を宿 したとき、両親が疾病の発病を恐れ、妊娠中絶の道をとることも十分に考 えられる。子供が幸福な人生を歩むのは誰もが望むところであり。逆に子供が非常に困難な疾病を抱え込むことはどんな親にとっても心配である。

したがって、遺伝子診断の結果として両親が出産をひかえたとしても。そのこと自体は理解できる行動である。配偶者を選ぶ時にも遺伝情報が使わ れるとすれば、その動機は出産前の遺伝子チェックの場合と重なり合う部分がある。いままでも近親婚を避けるなどの配慮はあったので、婚姻にさいしての遺伝子のチェックはまったく新しいことではなく。その延長線上にあると考えることも可能である。

さらに、遺伝情報は、生命保険や各種疾病にかんする保険に利用される 可能性をも有している。現在では加入前の審査は主として既往症の有無な どによって行われているが、これからは加入にさいして各種の遺伝情報の 提示が求められていくかもしれない。保険会社は、各個体の疾病関連遺伝 子を知り。当該個人の疾病発生のリスクを計算することができる。各個人 の行動様式や個体としての特性にあわせて保険を設計することを細分化保 険という。たとえば、喫煙者と非喫煙者との差はそれぞれの行動様式の違 いとして理解することができる。このような場合には、喫煙者にたいして は肺がんなどの疾病の可能性が高いと考え、非喫煙者に比べて高い保険料 を課すことが考えられる。遺伝情報の獲得はこのような細分化保険への道 をつけることにもなろう。保険会社の立場からすれば、各主体が負ってい るリスクの大小に応じた保険にすることができるので、リスクが小さい主 体にたいして過大な保険料を課す必要がなくなる。いままでは、小さいリ スクの持ち主が大きいリスクの持ち主にたいして相対的には保険料を払い すぎていたともいえるのである。遺伝子診断を利用した細分化保険が導入 されれば、個別主体のリスクに応じた保険料の徴収が可能になる。

このように、遺伝子診断によって、私たち個体の将来についてよりいっ そう詳細な情報が得られるようになることは、科学的知見の大きな飛躍で ある。とくに。遺伝子診断が遺伝子治療にまで進めば、人間が自らの英知 によって身体面にかかわるわずらいから自由になるのも時間の問題である ように考えられる。これは、たしかに劇的な科学観の変化だといえよう。

[設 問]

問 課題文では、遺伝子診断が人間社会に大きく貢献することが三つの事例によって主張されています。

①しかし、これとは逆に、科学の力によって遺伝情報が明らかになることから生ずる問題もあると考えられます。三つの事例の中から一つを選 び、課題文の主張にたいして説得的な反論を加えなさい。その上で、そ うした問題を解決するのにどのような対策を社会的に講ずることが望ましいのかを模索しなさい。解答欄Aに600字以内でまとめなさい。

②さらに。①にたいするあなたの解答のうち。課題文への反論部分を解答欄Bに40字以内で要約しなさい。

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