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年中無休の家庭教師 毎日学習会

慶應義塾大学 経済学部 小論文 2002年 過去問

2002年 慶應義塾大学  経済学部 小論文 課題文

次の[課題文]ならびに[図1]を踏まえ、以下の設問1~3に答えなさい。解答は解答用紙の所定の欄に横書きで記入しなさい。

[課題文]

 社会の変化とともに、今日、日本の大学は、そのあり方をあらためて問われている。1998年には大学審議会も新たに、大学に対して「高度の専門的知識・能力」の教育を求めながら、その一方で一年から四年の学部段階では「課題探求能力の育成」を重視すべきであるとの答申を出した。なかでも後者は、「主体的に変化に対応し、自ら将来の課題を探求し、その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力」と位置づけられ、答申のなかで繰り返し強調されている。また、この「課題探求能力の育成」は、2000年に中央教育審議会が、教育全般における「教養教育」充実の必要性を答申したこととも符合するものであった。

 しかし、考えて見ると、(A)ここで述べられているような大学教育への二つの期待は、どちらも近代の大学の歴史の中で、さまざまに試行されてきたものであった。

 一般に近代の大学の出発点としては、1809年に設立されたベルリン大学があげられる場合が多い。それまでにドイツでは、啓蒙思想の影響の下で、総合的に真理を探求する場としての大学が構想されるようになっていた。ベルリン大学は、そのような構想が実現した総合大学であり、哲学を中心に専門的学問の有機的な統一をめざすものであった。-

 また、フランスでも十八世紀には、神学を中心に組織された中世以来の大学に対する批判が強くなっていた。その批判の声を受け、フランス革命後に大学は、ドイツとは反対に、いくつかの単科大学に分解され、それぞれが法学、医学、理学などの専門分化した教育・研究を行う場となった。しかし、その後、ドイツの大学の成功に影響されて、十九世紀末には、これらの単科大学は再統合されて総合大学の組織を持つものとなった。

 一方、イギリスでは、専門を越えて学者と学生が寝食を共にする伝統的なカレッジ制が維持されていたが、その制度を守りながらも、新たな市民階級の勃興とともに大学教育の目的は十九世紀を通じて次第に変化した。それは、古典や歴史などの素養に裏打ちされた知性と見識をはぐくむ教育すなわち望ましい市民にふさわしい高等教育への変化であった。また、イギリスの影響を強く受けていたアメリカの場合にも、大学は市民の育成を目的とする場として発展をした。

 しかしイギリスやアメリカの場合にも、十九世紀後半の経済の発展にともない、専門的な個別知識への需要が高まり、またドイツにおける近代科学の隆盛にも刺激されて、十九世紀の末には、新たな変化への動きが生じた。イギリスでは、それまでの大学の特質は一方で守りながらも、専門的な教育のための組織・制度が大学に導入され始めた。また、アメリカの場合には、例えば、農業・工業等の産業教育に重きを置いた州立大学が設立されていった。アメリカにおけるこの種の教育は,具体的な職業に直接に役立つことを目的としたものであり、その後のアメリカの大学教育の一つの特色となった。

 (B)現在、日本の社会と経済が急に変化しつつある中で、大学の教育もかわっていくことが期待されている。しかも、現代の社会で大学の果たしている役割は必ずしも単純なものではない。そのような時にあたり、上に見たような近代の大学のさまざまな姿は、注意して振り返るべきものだろう。そこには、社会や経済の状況に応じた大学の変化が見られると同時に、英米独仏の場合だけを取り上げても、それぞれに個性があり、各々の場合で異なった理念に基づく自己主張があったことも見落すべきではない。

 以上のような点を考えれば、大学が目先の社会的要請に即応して変化していれば、それで良いというものでもない。むしろ大学は、社会の変化に対応しつつも、逆に社会に積極的に働きかけてそれを変える役目も持っているのではないだろうか。この意味からも、大学に関係する者みずからか大学の歴史を振り返りつつ新たな姿を議論すべき時と言えるだろう。

 

設問

1

[課題文]の下線部Aに関連し、次の設問に答えなさい。

 イギリスとアメリカにおいては、大学へのどのような期待が歴史上存在したか、課題文からそれらを二つにまとめ、それぞれがどのような社会的変化の中で重視されるようになったかを70字以内で述べなさい。

2

[課題文]の下線部Bに関連し、次の設問に答えなさい。

 「現在、日本の社会と経済が、急速に変化しつつある」とあるが、日本の社会や経済のどのような現実が、なぜ、大学における知の在り方に変化を求めているのか。具体的な事柄を1つ取り上げて130字以上150字以内で説明しなさい。ただし、この設問への解答に際しては、[図1]から読みとれる情報は利用しないものとする。

3

[課題文]の下線部Cならびに[図1]に関連し、次の設問に答えなさい。

 [図1]は1955年から2000年までの日本における四年制大学入学者数と18歳人口の推移を示したグラフである。このグラフから読みとれる情報とともに、大学をめぐるその他の状況を考慮した時、これからの大学はどのような理念に基づくべきであると考えるか、課題文を踏まえ、あなたの見解を460字以上500字以内で論じなさい。

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