慶應義塾大学 法学部 小論文 1998年 解説

・ 問題文
次の文章を読んで、明治以降の我が国における「建前と本音」についての筆者の考えを五〇〇字程度で要約し、その内容と関連付けながら、あなたの意見を述べなさい。
・ 問題の解き方
 5STEPsで書いていく。
・ 模範解答
議論の整理……
課題文では、日本人が明治維新後、西洋の諸制度を受け入れた一方で、その精神性を受け入れることについては拒絶したことから、「本音と建前」という独特の思考方法を手に入れたと述べられている。
日本人が、「建前」としての西洋の諸制度を採用さぜるを得なかった理由は、その反証可能性ゆえである。課題文中には、欧米の圧倒的な文明の力は、フランス革命を経て身につけた人権理念を表面に掲げたものだから抵抗しがたいものであった、という趣旨の表現があるが、これは近代の西洋文明が反証可能性のある議論のみを尊重すべき議論として取り上げたためである。そのため、今日の西洋の思想は多くの批判に晒され続け、そうした批判を真摯に受け止めた上で発展を重ねていったため、日本人はこうした西洋の諸制度を引き受けざるを得なかったのである。
だか、一方で日本人はそうした諸制度を、その精神性まで引き受ける気はさらさらなかった。実際、ソサエティの訳語は、明治十年近辺から「世間」ではなく「社会」として翻訳されるようになったが、ここで消えた「世間」という言葉が「私的社会」としての概念を持ち、一方「社会」という言葉が「公的社会」としての概念をもつようになったことからもそうした日本人の精神性を守ろうとする動きが見受けられる。
問題発見……
こうした「本音と建前」という思考方法が持つ最大の欠点は、このような考え方を持ちながらにして、西洋の諸制度、特に契約制度を運用することが極めて難しいことである。
たとえば、金利制限法についての議論はその一種である。年利二割九分で借りた金銭を、返済の段になって、年利一割五分まで軽減するべきだという裁判が起き、実際その主張が認められたことは、日本においてこうした思考形態が根深く浸透していることの象徴である。こうした社会では、契約は成立せず、よって諸外国との通商にはかなり大きな影をもたらすことになる。
原因分析……
今日の契約社会においても、「本音と建前」を重視する日本人の思考特性は他民族を排除する日本人特有の強い同質性指向がある。
強い同質性を現状維持しているがゆえに、契約や能力を示すシグナリングといったような客観的指標によってではなく、「空気」や「雰囲気」という言葉に代表される極めてあいまいな判断基準が広く採用されることになる。
こうした明文化されない判断基準を採用すべきだという極めて強い同調圧力こそが、日本社会における契約の正しい運用を困難にし、結果諸外国に対して開かれた経済システムを阻害している。
解決策……
こうした契約社会が成立しえない日本の前近代性を克服するためには、積極的に移民を受け入れる必要がある。移民を受け入れることによって、「空気」「雰囲気」が通用しない人との仕事の仕方を学ぶことが出来、結果日本人も契約の効用を自覚するため、「本音と建前」という思考形態は姿を消すだろう。
解決策の吟味……
こうしたあいまいさを許さない姿勢は、日本人が国際社会で仕事をする上でも必要なことであり、また諸外国の人々からは日本人のこうした契約社会への順応を歓迎する声も聞かれるだろう。日本人が「本音と建前」という思考形態を捨てることこそが、日本の真の近代化の第一歩なのだ。

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